出版社内容情報
グールドの意義を定着させた吉田秀和の文庫オリジナル・グールド論集。バッハ以後の対位法音楽の可能性の展開を魅力的に論じる。
内容説明
最愛のピアニストを論じた文章を集大成。
目次
名演奏家たち2
グールド讃
グルードの『ゴルトベルク変奏曲』によせて
グールド―外界が完全に消滅した人間の“のびやか”な演奏
モーツァルトを求めて
ベートーヴェン
スクリャービンをきく―アシュケナージ/ストイアマン/グールド
テレビで見たグレン・グールドの演奏
グレン・グールドを見る
うちなるものへ―グルードの死
グールド没後二十年
グールド再考
演奏二態
演奏の「違い」について
私はグールドのような人はほかに知らない
グレン・グールドとは何か
グレン・グールドを語る 聞き手=壱岐邦雄
著者等紹介
吉田秀和[ヨシダヒデカズ]
1913年、東京日本橋生まれ。音楽評論家。東京大学仏文科卒。戦後、評論活動を始め『主題と変奏』(1953年)で指導的地位を確立。48年、井上基成、斎藤秀雄らと「子供のための音楽教室」を創設し、後の桐朋学園音楽科設立に参加。57年、「二十世紀音楽研究所」を設立。75年、『吉田秀和全集』で大佛次郎賞、90年度朝日賞、『マネの肖像』で読売文学賞受賞。2006年、文化勲章受章。館長を務めた水戸芸術館開設を記念し吉田秀和賞が設けられている。著書多数。2012年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kajitt22
38
数十年前、初めて聴いたグールドの『ゴルトベルク変奏曲』(81年録音)の素晴らしさを、その低いハミングとともに思い出した。吉田秀和氏はこの演奏を「前例のない静けさ、各声部それぞれの流れの透明度が加わり、聴き手を自らの内面世界に誘う」と書いている。平凡な印象だったベートーベンのソナタ5.6.7番を、読後改めて聴いてみると、新たな光が差し込んでくるのが見えるから不思議だ。グールドの登場からその死後まで、折々の評論は一貫して音楽の創造者グールドへの敬意と愛情に満ち溢れている。2019/07/24
じゃがいも
18
吉田秀和さんグールドにべた惚れ。エキセントリックな天才とか狂気すれすれとか恣意的な演奏など評価が真っ二つに別れるけど、「演奏の稀代の美しさ」、「冷静に注意深く聴いているが、そうすればするほど感銘は心の深いところに通じ喜びとなり満ちあふれる」、「表面の艶々した瑞々しさとその下を絶えず生きて流れる抒情の味わいの気韻の高さ」、「バッハの中にまだ知られていない無限の新しさが内蔵されていることを気づかないわけにはいかない」など熱意の言葉はびしびしと伝わります。2019/05/15
広瀬研究会
10
吉田さんは日本の音楽界において、早くからグールドを評価していたうちの一人だけど、その実演にふれる機会には恵まれなかった。ということが再三述べられていて、それだけに映像でグールドが演奏する姿を見たときの印象を書いた『テレビで見たグレン・グールドの演奏』や『グレン・グールドを見る』にはちょっとした感動を覚えた。すれ違っていた二人がついに……みたいなしょーもない錯覚をしてしまった。2022/11/03
明石
5
うつくしい批評。2023/12/07
訪問者
4
吉田秀和が一番情熱を込めて、美しく語ったのがグレン・グールドについてである。遠い昔、氏の『1枚のレコード』を読み、「コールドベルク変奏曲」のレコード(当時は1955年版しかなかった)を買いに行ったのは、忘れられない思い出である。2024/07/04