出版社内容情報
事故死した妻が遺した名車に、不可思議なカーナビの履歴がみつかった。履歴をたどる旅で見えてきた、亡き妻の想いとは?
源 孝志[ミナモト タカシ]
著・文・その他
内容説明
妻の美奈子が突然事故で亡くなった。夫の希久夫にホンダの名車「エスハチ」が遺されるが、カーナビから不可思議な走行履歴が見つかる。藤沢、松本、尾道、モナコ…履歴をめぐる旅に出た希久夫に、美奈子が残した最期のメッセージとは?往年の名女優、伝説のエンジニアの人生と交錯したはてに感動のラストが待っている。
著者等紹介
源孝志[ミナモトタカシ]
1961年生まれ。立命館大学卒業後ホリプロに入社。CMやTVの制作を経てフリーの演出家・脚本家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@読書会10周年
76
妻が交通事故で亡くなり残された夫には妻の愛車が渡されます。交通事故にも関わらず妻から夫に遺言状がありました。夫は免許を持っていませんでしたが妻の遺言で自分に車が託されたとなっては自分で乗るしかありません。免許を取って乗ってみるとカーナビの履歴が不自然でした。妻はいつの間にこんな所に行ったのか気になってその地を訪ねてみると次々と明かされていく衝撃の事実。藤沢、松本、尾道、松山、モナコ、本田宗一郎にゆかりのある方はぜひ読んでみてください。2024/03/22
tamami
62
作品中自分に関わり深い街や名所が登場するということで、知人から借り受ける。一台のスポーツカーに秘められた履歴を巡って、日本と世界各所に展開する、生と愛と死。練りに練られた構成のもと、作者の的確な筆捌きは、与えられた運命を懸命に生きる人々の姿を生き生きと描き、些事に追われるだけの日々を過ごす自分にも、人生を生きることの意味を、振り返らせてくれる。印象的であったのは、理系人間としてのカーエンジニアや酒造りの杜氏の心理と技倆が詳述され、自分がその現場にいるような感覚を味わったこと。大人の小説を読ませてもらった。2024/04/29
neimu
54
現在放送中のNHKドラマの演出を楽しむこともできるし、演出に取り入れられた様々な作者のこだわりも垣間見え、文字で読むことの醍醐味も味わえる。硬派なロマンチストの話、とでも言えばいいだろうか。日本の景色の中にヨーロピアンティストの赤い車が疾走する。愛の証であることを示しながら。ミステリーめいた過去をたどる旅の美しさに、切なさに、感動してほしい。初めて読む作家だが、昔読んだ『美味礼賛』の海老沢泰久の文体を思い出した。文章の方で最後まで読んでしまったが、ドラマは描くのか楽しみだ。お取り寄せ64歳誕生日記念読書。2023/04/21
はにこ
53
うーん、美奈子にあんまり同調できなくて。夫に隠れて何でも解決しようとするのが。でもそうじゃないとこの話は成り立たないのか。旅行中の事故で亡くなった妻のカーナビの履歴を辿る夫の話。その先々で妻が夫に見せずに思い抱いてきたことを知り、妻の愛を知る。病気や不妊治療、夫と共有しても良かったんじゃない?ずっとそんな思いを抱きながらの読書になった。車にも詳しくないので、妻と私の共通点が無さ過ぎて共有できる価値観が無かったな。2024/05/01
さぜん
47
読書会課題本。面白かった!ホンダ「エスハチ」を夫の喜久夫に遺し、事故で逝ってしまった美奈子。カーナビの履歴を辿ることで彼女の秘密とメッセージを受け取っていく。構成が素晴らしい。蘊蓄もさることながら、喜久夫が次に何を突きつけられるのか、先を読まずにはいられない。伝説のエンジニア征二郎がカッコいい。モナコでの逸話は感動だった。二人の夫婦愛も良いが、喜久夫の家族の物語がグッときた。母の息子への想いはどれほどのものだったか。ドラマも見てみたい。2023/11/19