出版社内容情報
下町の姉妹を描いた時代小説〈おたふく〉三部作を完全収録。他に、文庫初収録の「児次郎吹雪」などを収録する傑作集。
山本 周五郎[ヤマモト シュウゴロウ]
著・文・その他
内容説明
苦しい時も、人の善意を疑わない姉妹を描いて、氏の最高傑作ともいわれる、心洗われる“おたふく”三部作をすべて収める。「四人ばやし」は女の情け、「襤褸と釵」は男の信念。―伯耆路は晴だ。―初文庫化の、若武者が凛々しい「児次郎吹雪」。そして「かあちゃん」。いずれ劣らぬ短篇の名手の傑作群。
著者等紹介
山本周五郎[ヤマモトシュウゴロウ]
1903年、山梨県生まれ。作家。関東大震災で被災し、神戸に転居、地方紙に職を求める。上京の後、千葉県浦安に移り、作家活動に入る。報道班員を辞退するなどの戦中時代を経て、戦後は横浜に居を定め、旺盛な作家活動に入る。映画化された作品も多数。また直木賞など数々の文学賞を辞退したことでも知られる。主な作品に、『小説日本婦道記』などがあり、また短篇の名手でもあった。1967年逝去。その業績を顕彰し、山本周五郎賞が設けられている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
69
周五郎さんの奥様とその妹さんの事を書かれていると昔聞いていたのですが、他の周五郎さんの本に引っぱられていつの間にか忘却、読み友さんのレビューで思い出した次第。周五郎さんが愛した奥様と貞二郎が周五郎さんに重なって、幸せだったからこそこのような市井の話が書けたのだろうなぁと。「おたふく」にしても「かあちゃん」にしてもいじらしい女は愛嬌が満載です。好きだと一途な想いに、駆け引き無しのおたふく姉妹だからこそ幸せになれるのですよねぇ2018/09/20
ぶんこ
49
全編ほっこり。明治時代の作家さん!ですが、まったく古さを感じない文章でスラスラ読めます。表題作2編、それ以外の作品もどれも市井に暮らす庶民の人の良さ温かさに溢れていて楽しい読書となりました。特に「おたふく物語」のおしずさんの天真爛漫さが秀逸。つい家族に怒ってしまう自分を反省して、お手本にしなくては。一家の主婦がおしずさんのように明るくて前向きだと、家族から周囲の人たちまで幸せにできるのだなぁと痛感。周五郎さんファンとなりました。2018/12/17
キムチ
45
再読。文体もテーマも古い。だが一人でも、この本にふれ、周五郎の世界の香りを感じて魅力に虜となってくれるかなと感じさせる一冊。「おたふく」三部作は短編の連作化。今では死語?のおたふく〜その持つ意味と空気→周五郎が愛してやまなかったものが何か、少し判るかも?三編は市井の生活を細やかに描きつつ、その間に流れる情感を写しだす。ラストは昭和活劇みたい。些か時代かかるけど、上から目線を好まなかった周五郎が、また、よく分かる。2018/09/18
チェアー
11
他人のことを自分より優先する。苦労しても、それを愚痴らない、誇らない。そんな人たちがかつてはいたのだということを思い知る。「おたふく物語」からは、好きな人と一緒にいることがどんなに幸せないことなのか。「かあちゃん」からは家族とはなにか、を学び、かくありたいと思ってしまう。ひょんなことから訪れた山本周五郎を読む機会。読めてよかった。2018/08/19
tomoka
9
山本周五郎作品は、私をそれた道から戻してくれる。定期的に読みたい作家。2021/07/08