出版社内容情報
あの「猫」は生きていた?! 苦沙弥先生殺害の謎を解くために、我輩、ホームズ、ワトソンたちの冒険が始まる。超弩級ミステリー。
【著者紹介】
1956年山形県生まれ。1986年に『地の鳥 天の魚群』でデビュー。1993年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、1994年『石の来歴』で芥川賞、2009年『神器』で野間文芸賞を受賞。
内容説明
時は一九〇六年、魔都・上海。あの「猫」は生きていた―「吾輩」の主人・苦沙弥先生殺害事件の謎を解くために、英吉利猫のホームズ、ワトソンも加わり、猫たちの冒険が始まる。夏目漱石『吾輩は猫である』でおなじみの寒月、迷亭、東風、そして三毛子、さらには宿敵・バスカビル家の狗も登場。謎が謎を呼ぶ超弩級の猫ミステリー。
著者等紹介
奥泉光[オクイズミヒカル]
1956年山形県生まれ。国際基督教大学大学院博士前期課程修了。86年「すばる」に「地の鳥 天の魚群」を発表してデビュー。93年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、94年「石の来歴」で芥川賞、2009年『神器』で野間文芸賞、14年『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
39
600ページ余。しかもぎっしり文字が詰め込まれている。読了できるか心配したが、「見た様な」や「六つかしい」などの表記に、これは漱石の文体をなぞっているんだと分かり、「音から入ると名調子です」(by古井由吉)のアドバイスに従ったら読み易くなった。辞書に出てこない漢語や四文字熟語も、大まかな推察のまま読み進む。「吾輩」や「伯爵」「将軍」「マダム」そのうえ「ホームズ」「ワトソン」と猫たちが主役で推理し冒険する話に引き込まれ、次々と読み進められた。前半は苦沙弥先生殺害をめぐるミステリーで後半はSFかな。2021/07/11
踊る猫
36
実に具だくさんだ。『吾輩は猫である』から受け継がれた漢文の素養が活かされている、漢字を多用した(それでいて実になめらかで読みやすく「漱石愛」に満ちた)文章にノセられてこの600ページの大作をお正月の三が日で読み終えてしまった。内容も推理合戦や冒険の要素、SF的な理論付けや歴史小説の奇想天外さなど(のみならず舞台の上海の様子が伝わるていねいな描写まで、とてつもない想像力を駆使して)、果ては『吾輩は猫である』の謎本(なぜ主人公に名前がないのか)的な素朴な問いさえ放つ批評ともなり得ている。なんという「愛」の奇蹟2025/01/03
とし
23
死んだはずの猫が、、、。「吾輩は猫である」をパロディー化したミステリー小説です。ホームズ、ワトソンなど出てきてそれぞれの掛け合いが面白かったです。魅力的な猫キャラクターが光っています。文体も漱石を真似たのか難しく私には難解でしたが、よく読んでみると独特のユーモアがあふれています。もし漱石がこの作品を読んだらどう思うのかな。ずいぶん前に読んだ「吾輩は猫である」をもう一度読んでみようかな、なんて思いました。本作品は長いので読むのは大変でしたが、とても勉強になりました。また猫好きにはたまらない作品だと思います。2016/04/11
みっちゃんondrums
21
上海に蘇った「吾輩」は、主人であった苦沙弥先生が殺されたことを知り、租界の公園に集う各国出身の猫たちと謎を解こうとする。探偵冒険小説?と思わせて、そこは奥泉センセぇ、幻想風味もたっぷりと盛り込んで、ラストに向けて大きな仕掛けを出す。文明、人間、日本人批評も忘れてはいない。恥ずかしながら『猫』をちゃんと読んでいないけれど、本家の語り口が徹底的に踏襲されていて、知的諧謔の雰囲気に浸れた。恋もある。「五千年ーー。そう、五千年経ったらまた妾(わたし)たちは遇う」ニャー。著者と柄谷行人氏との対談も◎。→以下メモ2016/06/24
えとろん
19
漱石の「猫」を読んだり後だと、苦紗弥先生が殺されてしまったので。吾輩の苦紗弥先生へのツッコミができなくなったのは残念。どうせ殺すなら迷亭、いや成金の金田あたりにして、苦紗弥先生に 濡れ衣がかけられたところを吾輩が苦紗弥先生にツッコミをいれながら謎を解くというのが面白そうだと勝手におもった。といっても本編が面白くないというわけではないのであしからず。2024/11/13