出版社内容情報
サンカ小説は三角寛だけではない。日本文学がテーマとした幻の漂泊民サンカをテーマとする、田山花袋「帰国」など傑作短篇10作。
【著者紹介】
本名敬二。1872年、旧御家人を父として東京に生まれる。東京日日新聞に入社。記者の傍ら戯曲を書き、『修禅寺物語』『番町皿屋敷』等の名作を発表。捕物帳の嚆矢〈半七捕物帳〉で人気を博した。1939年死去。
内容説明
日本近代が、国民国家を確立させるために、制外の民としてのイメージを担わされた賎民たち。文学は、側面から、その作業に抵抗し、「国民」の実像を追う。そのことがまた、彼ら彼女らの、支配を潔しとしない無頼の人生をいきいきと描きだし、ロマンをかきたてる。田山花袋、岡本綺堂、小栗風葉、椋鳩十ら十名の、傑作読み物集。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いちろく
51
山での生活を生業とし漂流する民である山窩をテーマにした短編集。この本を手に取るまでは、アイヌのような日本固有の原住民の人々をイメージしていたので、ギャップが大きかった。規律や世相に縛られず生きる人達は、良くも悪くも時間の流れに取り残される立場であり、その独特な価値観はより一層世の中との差を生じていく事は、想像に容易い。どの短編集もそのあたりをうまく汲み取っており、描かれた独特な世界観に酔ったのは事実。読友さんの感想きっかけで知った一冊、実在した民を舞台としたこんなにも独特な小説を読んだのは久々な気がする。2017/08/07
ひめありす@灯れ松明の火
50
私にとってサンカ、まつろわぬ民といえば『QED』や『赤朽葉家の伝説』に登場する半分ファンタジーの登場人物でした。まさしくこの表紙の女性が、私のサンカ観そのものです。でいだらぼっち、鉄鋼民、鉄と山の自由の民。だけど、なんとなく縁があっていつかはちゃんと知りたいと思っています。そういう彼らが少し前の時代にはどう描かれて、どう読まれていたのか。それを知りたくて読みました。全体的にアウトローで野性味のある短編が多い中で「凡親子」と「世間師」はちょっと毛色が違うように思えたけれど、一体どういう意図で編まれたのだろう2015/06/11
鷺@みんさー
32
いやこれが全作品面白かったのよ。本来の私は近代作家とか劇作家とか苦手なはずなんだけど、みっちり楽しめた。田山花袋の『帰国』が群を抜いてたかな。どこまでリアルなのかは置いといて、サンカと自然との関わりの描写が、しみじみと情緒があり美しい。彼らはアウトローとして、嫌われ畏怖されつつも、一部の人間にはどこか憧れも抱かれていたのだろう。ところで『世間師』だけが、どこがサンカなのかわからなかった。あの銭占屋が、なのか?まぁ面白かったのでいいんだけどね。2022/11/07
かおりんご
24
小説。最近読んだ本に、山窩の話が出てきたので手にした。が、小説なのね。本当にこんな人たちがいたのかは、謎。日本にいながら、日本とは治外法権な風習で生きる人たち。平家の落武者からの派生だとしたら、それはそれで興味深いけど。2021/10/15
ひなきち
20
サンカという、山の漂泊民たちを描いた作品集。全然知らずに手に取り、見事にハマった。読み終わるのが残念…!もっと読みたい…!明治・大正・昭和期に書かれた日本の小説って、意外と突拍子なくて…好きだな。そして、サンカに対する感情は必ずしも蔑視だけではなく、どこか憧憬の気持ちがあるからこそ「サンカ小説」という一つの分野が生まれたのだろう。中でも岡本綺堂「山の秘密」がお気に入り。私は、動機は恋だった…と考える。読者に想像させる小説は本物で…(^^)嬉しくなる。2017/06/27