出版社内容情報
横光利一の名作短編「機械」を11年かけてぐずぐず読んでみた。脱線バンザイ。読書を愛する全ての人に捧げる伊藤整賞受賞作の名作。
【著者紹介】
1956年生まれ。劇作家・演出家・作家。「遊園地再生事業団」主宰。92年『ヒネミ』で岸田國士戯曲賞、2010年「時間のかかる読書」で伊藤整賞を受賞。主な著書に『東京大学「80年代地下文化論」講義』等。
内容説明
脱線、飛躍、妄想、停滞、誤読、のろのろと、そしてぐずぐずと―決めたことは「なかなか読み出さない」「できるだけ長い間読み続ける」のふたつ。横光利一の名作短編「機械」を11年かけて読んでみた。読書の楽しみはこんな端っこのところにある。本を愛する全ての人に捧げる第21回伊藤整文学賞評論部門受賞作の名作。
目次
第1章 「私」がわからない
第2章 理解できない「視点」
第3章 「意識」に困惑する
第4章 途方にくれる「時間」
第5章 「わからなさ」の迷宮
第6章 やっぱり「私」がわからない
著者等紹介
宮沢章夫[ミヤザワアキオ]
1956年、静岡県生まれ。劇作家・演出家・作家。「遊園地再生事業団」主宰。93年『ヒネミ』で岸田國士戯曲賞、2010年『時間のかかる読書』で伊藤整文学賞評論部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
134
横光利一の「機械」という作品、この本の中の最初に全文が収められていますが、をじっくりと読んでいくという面白い試みがされています。それだけでこのような文章を書けているというのはやはり著者が今まで読んだ本がものを言っているのでしょう。灘中学で、3年間で国語の授業で中勘助の「銀の匙」だけを読ませるという試みと似ているのかもしれません。このような読書も今の時代あってもいいのでしょう。ただとても私にはまねできません。2015/10/19
鱒子
71
表紙のセンスに惹かれジャケ買い。著者が11年余りかけて書いた、横光利一「機械」についての解説本。わたしもグズグズ時間をかけて読もうと思いましたが、4ヶ月しかかけられませんでした。未熟者です。読書で何かを得たいと思う人は避けるべき本です。最大限に非効率的で、なんの役にも立たない事だけは保証できます 笑。ただこのグズグズ感は心地よさと楽しさを伴っています。これも読書の妙。2018/12/06
(C17H26O4)
63
笑った。凄く面白かった。こんな本の読み方があったとは!横光利一の『機械』について「なかなか読み出さない」「できるだけながいあいだ読み続ける」そう決めて11年数ヶ月にわたって書かれた冗談のようなエッセイ。あまりに時が経っていてなぜそう決めたのか、もはやわからないというのも頷ける。本当になかなか読み出さないのにまず笑い、登場人物や場面についてのあらゆる角度からのしつこい考察、妄想に何度も何度も笑ってしまう。もちろん『機械』について理解は非常に深まります。『機械』を既読の人にもそうでない人にもおすすめ。2018/11/02
メタボン
40
☆☆☆☆ まず「機械」の文体と宮沢章夫のエッセイの語りが、ひどく親和性があり、「機械」の登場人物たちにツッコミを入れる宮沢章夫の文章が、やたら面白くて仕様がない。宮沢が「機械」を超遅読の題材として選んだのも確信的だと思う。11年にわたり味読してきただけあって、全く思いつかないような視点がいろいろと出てきて考えさせられる。特に「改行」に関する考察は、深いなと感じた。2020/03/29
踊る猫
36
緻密に組み立てられた時計を分解していくように、宮沢章夫は横光利一の短編小説『機械』を読み解く。先人の横光への敬意を感じさせつつ、しかし(いや「だからこそ」?)無表情をキープしつつ随所に光るユーモアを散りばめ、演劇作家ならではの着眼点を武器として活かし丹念に「読解」は続けられる。いや、これはもう「解読」だろう。怪文書、あるいは外国語で書かれた文をそれこそ1文ずつ解きほぐしていくかのように虚心坦懐に向き合い、時には妄想や脱線を恐れることなく。こうした読みは、それこそ『機械』の主人公の妄執とシンクロしていないか2024/07/31