内容説明
美樹は航空機の安全な運行をになう航空管制官。聴覚異常に苦しめられる彼女は、街で出会った盲目の男と恋に落ち、かつてない世界へと開かれてゆく(「ヴォイセズ」)。/原発事故前に書かれた予言的衝撃作「太陽の涙」、欠落の意味を問う「ヴァニーユ」、著者の代表作を一冊に。
著者等紹介
赤坂真理[アカサカマリ]
1964年東京生まれ。2012年、少女の目で「戦後」を問う長篇『東京プリズン』で、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞を受賞。1997年『蝶の皮膚の下』(河出文庫)でデビュー以来、メカニカルさと有機性が絶妙に融合した感性で、人間の本質に迫り、常に注目を集めてきた。映画化された『ヴァイブレータ』(講談社文庫)、野間文芸新人賞受賞作「ミューズ」などの作品がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
James Hayashi
21
4つの短編・中編集だがかなり深い。性描写はかなり繊細に。原発は抽象的に。しかし本質を抉り出すかの様な文体。難しい。2021/01/21
ちぇけら
21
からだじゅうの襞を感じる夜に、肌の傷は触れると敏感なのだから、あなたが入ってきたときも、ゆめをみていた。あなたの不在にあらゆる感覚が研ぎ澄まされて、やがて鋭い快感は感覚を通過してdirectでわたしに刺さって脳天まで痺れる。「噛んで。傷を噛んで」どこまでも鋭くなれる気がして、傷はわたしのしるしだった。beerを垂れ流したすべての鳥肌があなたを感じすぎて、湿った空洞は音をたてて湿る。ねえ、今夜わたしたちどこまででもいける。ひとりぼっちの傷だらけの肌が吸いあって離れないように、毛布の膜のなかで、ねえ、あなた。2019/07/04
たぬ
15
☆2 うーん…赤坂真理さん私には合わないかもなあ。これまで読んだ2冊もまったく振るわなかったからなあ(『東京プリズン』2.5点、『コーリング』1.5点)。航空管制官の女(30)と盲目の男(25)が恋愛関係になる「ヴォイセズ」はなかなか良かったのだけど、「白い脂の果実」と「ヴァニーユ」は結局セックスしてるだけだし(まあ「ヴォイセズ」の二人も初めて会ったその日にやってるけど)、「太陽の涙」は雰囲気だけがゆらゆらしていてよくわからない。(続く)2025/09/04
ライム
4
特殊技能で立派に働く女性に好感持ったものの、突然の不調…耳の可聴域が狭まるという致命的なもの…に襲われ、大事な任務はどうなるのか?立場は失われるのか?そして逃げるという選択肢は無い…こんな八方塞がりの辛い状況を共感とともに読み進めました。盲人の山彦と出会って知る、見えない人の超感覚。でもそこに至るまでに発声障害の克服や飛ぶ練習をさせられるとか、他者の知らない苦労の道筋があるのか。文章で刺激された色々な感覚が脳内で再構築され、実際に光や色、震えや痛みが感じ取れたように読めました。2025/11/24
alison
1
視覚と聴覚と外国語。異国でのエイリアンのような自分。赤坂さんが15歳で突然海外へ放り込まれた経験があると読んだがそういう感覚が反映されているのだろうか。2022/02/12




