内容説明
ふつうの人々の営むささやかな日常にも、心打たれる物語がひそんでいる。その一つ一つをていねいにすくい上げて紡いだ、美しく切ない作品集。妻殺しの容疑で起訴された友人の物語「尾瀬に死す」(TVドラマ化)ほか、ネットカフェ難民の男女の出会いを描いた表題作、はぐれカモメと放浪犬とおばあさんの物語など十四篇を収録。
著者等紹介
藤原新也[フジワラシンヤ]
1944年福岡県生まれ。写真家、作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
99
藤原さんと言えば、写真集やエッセイを思い浮かべてしまうが、これは14編の短編が収められた本だった。エッセイ集と同じようにしみじみとした温かさと優しさを感じる内容。藤原さんの優しさは、野に咲く花を手折らずにそっと見守るようなものだと思う。どの短編も良かったが、一番のお気に入りは、ネットカフェで知り合った男女の出会いを描き、不思議な余韻を残す表題作だった。2014/04/18
リッツ
24
ふっと手離したら、風に飛ばされて探せなくなったり、自分で望んできたはずの遠いところで会いたい人を思い出したり、そんな時の気持ちを思い出しました。切り取られた瞬間の鮮やかさが永遠にどこかにあって、佇んだ時胸に満ちてくる寂しさがとても愛しくなりました。2015/01/16
柊子
20
句点が少なくて、とても読みにくい。これが一番の感想。 短編集なので、感動は全体的に軽め。「車窓の向こうの人生」は良かった。いつもと違う道を歩いていた時に、偶然出会った人、見かけた景色…それらが自分の生き方を、変えることもある。うん、確かにあるかも。2022/07/30
Takashi Takeuchi
15
あとがきによれば著者の友人や街角でふと知り合った人たちから聞いた話だとか。1編目の「尾瀬に死す」はとてもノンフィクションとは思えない不思議な話(結構な脚色が入っているかも知れないけれど)。美しい話だった。決まりきった毎日の生活で行動を少し変える事で訪れる転機。男と女の出会いと別れ、ほんの少しの勇気で人生が変わったかもしれない。1作あたり15ページ程の短編集ながら不思議な余韻が残る。好きです。2019/03/10
Salsaru
14
どこかで読んだ気がしたら、フリーペーパーの連載だったようだ。運命という言葉では安易すぎる。見逃してしまうほど、小さなヒントだけを頼りに、たどる縁。2014/04/19