内容説明
北の夏、海辺の街で男はバラックにすむ女に出会った。二人がひきうけなければならない試練とは―にがさと痛みの彼方に生の輝きをみつめつづけながら生き急いだ作家・佐藤泰志がのこした唯一の長篇小説にして代表作。青春の夢と残酷を結晶させた伝説的名作が二〇年をへて甦る。
著者等紹介
佐藤泰志[サトウヤスシ]
1949年、北海道・函館生まれ。國學院大學哲学科卒。高校時代より小説を書き始める。81年、「きみの鳥はうたえる」で芥川賞候補となり、以降三度、同賞候補に。89年、『そこのみにて光輝く』で三島賞候補となる。90年、自ら死を選ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
535
若者の貧困を語った新書で紹介されていた作品。映像鑑賞済み。貧困から抜け出したくともその方策のない、主人公たちの生き様。映画は第一部の大筋をなぞって制作されたようだが、文字通り光の見える第二部も読み応えがある。子どもたちの幸せを願いながらも、手助けするすべもない母親が不憫だ。表題は「そこ(底)のみにて」なのだと知り、やりきれなさに拍車がかかる。若くして自死されたという作者の作品、手に入る限り読み尽くしたい。2022/05/18
おしゃべりメガネ
251
北海道は函館出身の作家さんで初読みの佐藤泰志さん作品です。読み始める時に読友さんが絶賛していたので、自ずと期待値ハードルが上がってしまいましたが、そんな高さをものともせず、軽々と楽勝にクリアしてしまうくらい素晴らしい作品でした。とにかく人物描写や心理表現が秀逸で、何気ないしぐさや、表情までもがこの上なく繊細に伝わってきます。人物がそれほど多くなく設定されているので、読みやすく、その風景の美しさも合わせて堪能できます。個人的には主人公より「千夏」さんのキャラがとても魅力的で、とても素晴らしい読書時間でした。2015/10/27
カムイ
110
佐藤泰志作品二冊目、昭和50年代の函館を舞台にした若者の群像劇かなぁ⁉️舞台は啄木公園にあるバラックと市営住宅と大森浜と海岸町にあったラブホ。全てリアルタイムで体験しているこの場所に彼らが私の横をすり抜けていく様がdejabu様に目眩すらした。主人公の達夫、彼女の千夏、その弟の拓児の残酷なまでの青春に不器用だ、町の衰退を背景にしながら希望を持ち、日々をおくる姿は底辺にいても明るさはあったと言えるだろう。冒頭にパチンコ屋の場面ではあり得るかなとそんな出会いで人生もガラッと変わってしまうのは、この→2022/01/26
あちゃくん
106
今年見た映画で、心揺さぶられた作品の原作本。映画は映画で、小説は小説で、両方とも独自に美しさが有り良い作品でした。ストーリーは映画と小説で多少組み替えていますが、ともに納得感がありました。小説の方は乾いた筆致ですが人間の情動をうまく表現できていると思います。良い作品でした。2014/09/25
おしゃべりメガネ
95
9年ぶりの再読です。北にある海辺の街でのなんてことなく感じる出来事をただただ淡々と綴っているだけにも捉えれますが、やはり独特な雰囲気は本作、作者さんならではかなと。全体通して、なんとも救いがたいダークな雰囲気が印象的です。登場人物の誰もが果たしてフツーの幸せを手に入れるコトができるのか。主人公「達夫」となんともセクシーな雰囲気の「千夏」のからみがどの描写もステキです。決して読後感がいいとは言えない作品ですが、こういう雰囲気重視な作品をたまに読むのも刺激になります。あまり北海道感は伝わってこなかったかな。2024/11/17
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