内容説明
ブッダ、束縛という名の息子ラーフラ、孫のティッサ・メッテイヤ―人間ブッダから始まる三世代を描いた衝撃のデビュー作「肝心の子供」(文藝賞受賞作)、受賞後第一作にして芥川賞候補作「眼と太陽」に加え、保坂和志氏との記念すべき初対談を収録。
著者等紹介
磯崎憲一郎[イソザキケンイチロウ]
1965年、千葉県生まれ。2007年『肝心の子供』で第44回文藝賞を受賞しデビュー。08年『眼と太陽』が芥川賞候補に。09年『終の住処』で第141回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かみぶくろ
43
巻末の対談でも言及されているが、著者独特の時間観が理解し難くだからこそ逆に興味深い。終の住処の11年話に連なる時間飛ばしは既に頻出し、具体や風景の蓄積が時間と言われればそうなんですかね、と曖昧に頷くくらいしかできない。硬質で実験的な文体含め(これも一つの時間表現だろう)、端的に異質な小説である。保坂和志氏と同じ設計図なしに書いていくスタイルと聞いて納得。意味論抜きの世界直結描写。いわゆる難解純文学。置き去りにされてる感はあるが社会から外れたこういう文学こそ現代に必要だというのはなんとなく分かる気がする。2014/12/29
Bartleby
14
『肝心の子供』は著者のデビュー作。とても気に入っている。スッドーダナ、ブッダ、ラーフラを描いた作品だがいわゆる歴史ものとは趣きが違う。ときどき、ついうっかり書いてしまったかと思われるような文や表現があらわれ、笑えたり、感心したりする。そのくだりを見つけるのがこの著者を読む醍醐味だ。『眼と太陽』は現代のアメリカが舞台。が、文章はその明白な主題を口実にやりたい放題。ナンセンスな預言めいた文がとくに笑える。と書きながらまた読みたくなってきた。2023/06/13
とうゆ
9
たんたんと、簡潔な言葉で語られる物語は、まるで古代に書かれたようだ。どこがよくて賞を取ったのかは、いまいちわからなかった。2015/06/10
Erina Oki
6
純文学の堅苦しさもあるが、描写が優れている。時制が分からず内容が突然変わるのは読みにくかった。ブッダについて知りたくなった。2013/01/31
Yuka
5
息継ぎがないような流れるような文体は独特だけれど、溺れることなく飲み込まれて頭の中に映写機のように情景が浮かぶ作品だった。 『肝心の子供』はブッダの歴史小説なのかなと思ったら巻末の対談でラーフラの奥さんの名前などは創作とのこと。実際にいた人物をベースに描かれた創作だとしても自然体にそこに存在しそうな不思議な世界観だった。 普段は5分でも時間があれば作品を読み進めるタイプだけど、この磯崎憲一郎作品は流れを止めずにたっぷりの時間で楽しむのが最適な作品だと思った。2022/12/11