内容説明
女学校中の憧れの的である下級生を思慕するあまり苦悩する少女、美しく志高い生徒と心通わせる女教師、実の妹に自らのすべてを捧げて尽くした姉…可憐に咲く花のような少女たちの儚い物語。「女学生のバイブル」と呼ばれて大ベストセラーになった、乙女たちの心に永遠に残る珠玉の短篇集。
著者等紹介
吉屋信子[ヨシヤノブコ]
1896年、新潟市生まれ。10代から20代にかけて発表した『花物語』が「女学生のバイブル」と呼ばれる程の大ベストセラーとなる。その後、多彩な作品を次々と発表、流行作家として人気を博した。52年、「鬼火」で女流文学者賞、67年、菊池寛賞受賞。73年、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐島楓
61
「女学生のバイブル」と呼ばれた本書。当時の女子にとって進学が難しかった女学校。そこで出会い慕う相手はなぜか女性のみ。色彩を添えるのは花や星や少女の死・・・などとのちの小説や漫画に与えた影響をビシバシ感じ取り、大変興味深く読了。著者は長い間小説を書き続けた方。大人向けの作品にも興味がわく。2016/10/04
ヒロミ
48
【読メ乙女部金字塔】大正時代に発表された吉屋信子の連作短編集「花物語」もいよいよクライマックスへ。クライマックスと言っても上巻と変わらぬ素晴らしいクオリティで繊細な砂糖菓子のような美しき乙女たち儚い世界が展開されております。ヒロインの乙女ふたりと比べると周囲は書き割りじみていていっそ清々しいです。抑圧の強い家父長制度が長く続いた大正年間に、頁をめくる乙女たちはどんな心持ちだったのでしょうか。名作。2018/02/19
なつ
45
続けて下巻も。上巻からつながる表紙もとてもステキです。上巻と比べると関係性がより濃くなり、物語に深みが。すれ違いや失恋といった展開も・・・ 悲しい運命に翻弄される少女達に胸が苦しくなりました。今とは全く価値観が異なる時代。のしかかる現実の重たさよ。「日陰の花」「ヘリオトロープ」が特に好き。2021/10/25
優希
32
美しくて可憐で悲しみに満ちています。同性愛の甘美な香りは少女たちの儚い姿へと重なります。花というガジェットがあり、そこに物語がのってくるので香り立つ美しい作品になっているんですね。長編がメインになっているので上巻より話に入りやすかったように思います。全てをささげるような儚い日々に酔うのが好きです。女学生のバイブルと言われるのがわかるくらい珠玉の儚さが詰まっているような気がしました。この作品は永遠に乙女を魅了していくでしょう。2014/07/13
ふりや
14
上級生や姉、教師への憧れ、下級生や妹への思慕といった女性同士の愛情を描いた物語。下巻に進むにつれ、はっきりと「同性への恋愛感情」と受け取れる話も多くなっていきます。この作品が書かれたのがおよそ100年前の大正時代だということを考えると、かなり挑戦的な作風と言えるかもしれません。自分は太宰治の『女生徒』や『待つ』のような女性視点の作品が大好きで、同じ雰囲気をこの作品からも感じて、とても面白かったです。とは言え、上下巻合わせて短編が52篇、同じようなトーンの話も多いので、少しずつ読んでいくのが良いと思います。2022/02/10