感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
17
裕福で美しい娘ヴァニーナがバカンスに訪れたサルジニア島でジョルジョーネの絵から抜け出てきたような男と初体験をする話。と書くと大変いかがわしいですが、冒頭でこの島を「牧神の土地」と例えているように、全体に神話的な雰囲気を帯びているように感じました。ヴァニーナは川辺(海辺)を訪れたニンフで青年は牧神と見ることもできます。終始青年が無言でいることもこの雰囲気の醸成に一役かっています。海辺に咲く百合の強い香りと南国の強い光と陰に包まれた作品でした。関係ないですが黒い絹のスカートは重量感のある絹だといいと思います。2016/03/08
YO)))
11
変態という名の紳士,マンディアルグ先生の傑作中編.サルジニア島を訪れた若い娘のひと夏の恋―出会いから破瓜の儀式まで―の物語.著者お得意の幻想・超現実は影を潜め(ヒロイン,ヴァニーナの夢想として現れはする),島の(現実的な)自然や人々が詩情豊かに描かれている.それにしても,ヴァニーナのように,若さと美しさ―勝ち気さや,時には傲慢さでさえもそれらを通せばただ魅力に感じられてしまうほどの―を充分に持ち合わせていて,またそのことを自覚している,というのはどういう気分なのだろうか.生れ変わったら経験してみたいものだ2012/09/05
すばる
3
美しい描写に惚れ惚れとした。けど、「パンティ」って訳だけはどうにかならなかったのか…(かといって、パンツ、下着、下履き、ショーツ、スキャンティ、どれもしっくりこない)2021/09/17
呑芙庵
2
『満潮』の短さと『海の百合』の長さ、この2つがマンディアルグの作品群を縁取っているような気がする。2018/04/29
しょこ
2
人は人によってもたらされた不条理な絶望の中でどのような抵抗が可能だろう?少女は自身がマリア様のような神聖な存在となり、生贄として自らを絶望という暗黒の中へ捧げたのだろう。襲いかかる無限の恐怖と憎しみに向かって、儀式の中で舞い高めた魂と祈りの心という神器を御守りに、たったひとりで戦い抜いた。たとえ悪でも、ある者の手の中では、ある者のまなざしの中では善となる。 そんなことを感じた。2013/09/12