内容説明
「なぜあの時、ああしてしまったんだろう」「なぜ私ではなく、あの人が?」人なら誰しも日々かみしめる苦い思い=「後悔」「自責」を問いかえす中から、意図、偶然、運命、同情など切実な主題と人間と世界の本質にせまり、「哲学」することの初心をよびさます、あざやかでせつない名著。
目次
A 後悔(意図的行為に対する後悔;非意図的行為に対する後悔;後悔と偶然;後悔と運命)
B 自責(苦しみあえいでいる人に対する自責)
著者等紹介
中島義道[ナカジマヨシミチ]
1946年生まれ。哲学者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テトラ
16
なんだろう、読み終えると圧倒的な切なさに襲われる。著者の経歴を知って読んだからかもしれないけれど、哲学を志すことの甘美と悲哀とはまさに本著に記された通りであろうと思う。後悔と自責。それらを避けて生きることなどできないならば、見ないふりをして押し殺すのではなく徹底的に見つめて向き合おうとする心を持ち続けたい。2015/10/18
水色系
10
苦しみあえいでいる人に対する、自分は何もできないという自責の念。「なんで、私ではなくこの人が?」という問いに(それはそういう運命だったとか、たまたまそうなったんだとかで片付けるのではなく)真摯に向き合い続けることこそが「哲学すること」。後悔や自責から目をそむけず徹底的に向き合おうとする心を持ちたい。難解だった。数年後に再読したい。2021/09/20
ichiro-k
10
「悔いのない人生を送る」などと耳にする度に、居心地の悪い思いをしていた。そういう人間が現在まで「後悔・自責の念」に囚われずに生きてきたとは思えないし、将来、それを感じずに生きていくことができるとは思えない。そんなことを口にする人間を心の中で「軽い奴だ」と思いつつ我慢している。2010/06/22
hiyu
9
冒頭の後悔への扱い方は非常に同意できる。運命にこだわりやすい自分には非常に耳の痛さを感じたところもあった。ピント外れなのだろうが、後悔と自己愛の関連性はどうなのだろうかと思いながら終える。こういう解説は非常に好き。2017/09/04
白義
9
後悔と自責、一般にネガティブなものとして排斥されるその二つの持つ意味を限界まで問うことにこの本は費やされている。そのことによってこの本は結果的に、過去を起点に時間を捉える中島義道の分析哲学的側面と、カントに影響された倫理学側面、そしていつものネガティブエッセイが交錯する、中島義道入門にうってつけの一冊になっている。エッセイスト中島義道と哲学者中島義道、両方を好む人に特にオススメ2011/12/15