内容説明
ぼくは野球を知らなかった。ぼくの友だちもパパもママも先生さえも知らなかった。「野球を教わりたいんです」―“日本野球”創世の神髄が時空と国境を越えていま物語られる。一九八五年、阪神タイガースは本当に優勝したのだろうか?第一回三島由紀夫賞受賞の名作。
著者等紹介
高橋源一郎[タカハシゲンイチロウ]
1951年、広島県生まれ。81年「さようなら、ギャングたち」で第4回群像新人長編小説賞優秀作を受賞し、デビュー。88年本作で三島由紀夫賞、2002年『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かみぶくろ
85
なんだかまったくわからなかったけどおもしろくなくもなかった。やきゅうずきなもので。2016/12/17
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
70
端正でシュールで哲学的な〈文系野球〉の異色作。球技としての野球が喪われた世界で、〈わたし〉は古今東西の書物から野球に関する文章を書き写すことをライフワークにしている。フランツ・カフカやウォルト・ホイットマンなど〈野球人〉の言葉は深遠だ。そこに「野球について知りたい」という少年が訪ねてきて、時空を超えた旅が始まる。心地よいリズム。縦横無尽に広がる想像力。村上春樹氏を10倍難解にしたストーリーテリング(もし、あるとするなら)。1985年、阪神タイガースは本当に優勝したのだろうか? 第1回三島由紀夫賞受賞。2015/04/10
ちぇけら
27
再読。ホーム・スチールの予感がして、あわてて外を攻める。おれは初めて対戦するヤツがみんな驚くほどに速いから、いきなり中を攻めるようなマネはしない。相手を一度のけぞらせたら、それでおしまいだからな。ノー・アウト1塁での右打ちや、ツー・アウト2塁で外野に打球が飛んだときのサード・コーチャーの左腕の回転を見られない野球なんてゴメンさ。「注意しろ、耳を澄ませろ。この世の中に野球と無関係なことはひとつもない」野球はセカンド・ゴロのようにいたるところに転がっているんだぜ。なあ、ダブル・スチールの快感ったらないよな。2020/01/28
田氏
20
高橋源一郎としてはかなりキャッチーな部類じゃないだろうか、少なくとも自分が読んだことのある中では。ここでは「日本野球」ということばは函数のようなはたらきを持っていて、ベースボールのような何らかのスポーツはもちろん、文学とか哲学とかポストモダンとか、わりといろいろ受け容れてくれる。そうしていると、この小説の「日本野球」ってなんやわからんかたちしてるけど、よう見たらあれとかこれとかとシンメトリーやな、したらこのIV章って圧巻やな、とか思えてきたりする。思えてこなくても、謎のカタルシスがあるから大丈夫、たぶん。2022/05/16
ぺぱごじら
15
たまたま野球の話だが、要は「生き様」にまつわる奇妙なお話。「好き」とか「ハマってる」なんて生易しいものではなく「耽溺」し身体にDNAレベルまで刻み込み、自分の子供なんかはもう無条件で「好きなのが当たり前」となる位、何かを愛している人たちのための物語。何かを語る時に直接的にその事を語るようでは下、なのです。もちろん仕事や学業など日常生活にコレを持ち込むと叱られます(笑)。2017-1802017/10/29