内容説明
新しい恋人、春志と、性的に特殊な事情を持つ人々が集まる見せ物一座“フラワー・ショー”に参加した一実。だが、一実自身は同性である映子に惹かれてゆき、そして―果して親指Pを待ち受ける運命は?性の常識を覆し、文学とセクシャリティの関係を変えた決定的名作が待望の新装版に。
著者等紹介
松浦理英子[マツウラリエコ]
1958年、愛媛県生まれ。85年『葬儀の日』で第47回文学界新人賞を受賞し、デビュー。94年、『親指Pの修業時代』で女流文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アマニョッキ
62
いやこりゃ本当にすごい作品。人間は生殖だけではなく、愛や快楽というかたちでもセックスを求めてしまうという試練。性器的なものばかりにスポットをあてているようでいて、実は非性器的な皮膚感覚にこそ本当の快楽はあるというテーマの深さ。これは全人類必読の書ではないだろうか(言過?)。教科書に!というのは無理だろうからして、どこかの大学の文化人類学なんかの課題図書にしてくれないだろうか。こっそり講義に忍び込みたい。2018/02/12
ちょこまーぶる
44
上巻に引き続き性描写に対してちょっぴり食傷ぎみになってしまう一冊でした。ですが、ドロドロした描写ではなく、フラワーショーという性の見世物での描写なのであっさりと読めてしまいました。そして、フラワーショーの個性的な面々が、自らの身体的特徴などとの葛藤から培われた性に対する個人の思想などをぶつけ合う場面などは非常に難解ではあるが、納得できる考えも多く学ばせてもらいました。最後にそれぞれの道に旅立つメンバーには、何故か安堵感を感じました。でも、個人的には盲目だった春志の視力が戻らないで欲しかった思いはあるな。2015/02/17
TATA
37
読み切った。ここまで性愛のことについて深く考えさせられる本はなかった。上下巻とも読みながらいろんなことを考え、そして最後の作者のあとがきで答え合わせ。フツーの外側にもフツーがあって、気がつくとフツーの領域は思ってた以上に広がってる。きっとそういうこと。今晩なんかすごい夢見そうで怖いかも。2019/11/08
松本直哉
23
女性の足にペニスが生える特異な設定や際どい性描写にもかかわらず、性をめぐる真摯な探求、性についての思い込みから解放されて全身的な歓びに目覚めるまでの過程への内省はほとんど哲学的。盲目の青年春志の、中性的とさえ見える優しさは、盲目ゆえに、視覚で値踏みする男性的暴力から免れているためだろうか。イメージに囚われずに自分の感受性の赴くままに映子と接吻と抱擁を交わすとき、もはや相手が同性であることは大した問題でない。男根中心主義からいかに自由になるかをめぐる修業が、主人公一実の vita sexualis だった。2025/02/28
さゆ
20
結局、一実の成長物語だったんですね。最後まで読めてよかったですよ。中途半端に挫折していたら、すごく疲れるだけの小説、という印象しか、残らなかっただろうと思う。あいつが死ななかったのは残念だけど、死んだら話がややこしくなるから、まあいっか。2010/12/04