内容説明
中古で買った愛車「ネモ号」に乗って、当てもなく道を走るぼく。とりあえず、遠くへ行きたい。行き先は、乗せた女しだい―高校の同級生だった春香、バーで偶然隣合わせていたトモコ、ヒッチハイク中の年上女…助手席にやってくる奇妙な彼女たちとのちぐはぐな旅はどこまで続く?直木賞作家による青春ロード・ノベル。
著者等紹介
角田光代[カクタミツヨ]
1967年、神奈川県生まれ。90年「幸福な遊戯」で第9回海燕新人文学賞を受賞。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、98年『ぼくはきみのおにいさん』で坪田譲治文学賞、『キッドナップ・ツアー』で99年産経児童出版文化賞フジテレビ賞、2000年路傍の石文学賞、03年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、05年『対岸の彼女』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shizuka
51
タイトル買い。話はまあまあ。愛車で放浪は悪いテーマじゃない。人生一度は体験してみたいよね。気の向くまま、足の向くまま。2番目の彼女。これはあれだ、危ないやつだ。深入りしなくてよかったと思うよ。3番目の彼女。容姿はぱっとしないかもしれないけれど、やっぱ自分持ってるから輝いてる。誘惑に負けない。かっこいいよ。だからこそ、最後主人公は離れ難く思ったんだろうなあ。でもまだまだ青臭い青年だから、振られてしまったけどね。ネモ号、センスいい名前。この愛車とともにたくさん経験を積んでいい男になっていただきたい。是非に。2016/07/01
紅香
39
車を買った頃を思い出す。持ち物は好きな音楽。口から出た会話はすぐに乾いてぺらぺらで、海まで行った夏。地元もよく知りもしないで。目的地よりもここじゃない場所に辿り着くことが何よりの関心事。この物語のネモ号に乗ってそんな無責任で怠惰なあの頃へドライブ。今より断然、身軽で軽かった。期待してなかったけど想像以上に面白い退屈。読み終わった後、好きだな、この作品ってしみじみ思った。『この先に多分びっくりするようなものは何もないことを知っている。それでもなぜか、暗闇で覆われたこの道の先をどこまでも走ってみたくなる』2016/02/11
ともとも
37
個性豊かというか、豊かすぎる登場人物。 痛々しさと重苦しさ、会話と距離間のチグハグさ などを感じながらも、ロードムービーのような、 青春モノのような展開、そして、人間の関係、愛、人生に 疑問を抱きながらも、深く考えさせられてしまう。 それが、物語を面白くさせていて良かったと思います。 いろいろと交錯する不器用でマイペースな人間模様。 人の生きることの素晴らしさを痛感させる1冊で良かったです。2015/08/26
佐島楓
31
人生初めての車を買った「ぼく」は、相手まかせの「旅」に出る。雨にすっぽりとくるまれた部屋から外を眺めているような、ぼんやりとした感触の物語だった。若いときはこの時間が永遠に続くと信じて疑わないし、時間を無駄に遣うことも多々あるし、何よりももっと傲慢なものだと思う。その若さの特性を寄せ集めたような、でも語り手が男性だというところでワンクッション置かれている、独特の雰囲気を持った小説だ。2015/01/09
ピース
29
初めて買った車に「ネモ号」と名付ける。最初は車をみんなに見せ付けるのが目的だったが過去に自分に好意を持ってた女を車に乗せる。その女が車を降り別の車に乗せる。又その女が車から降り別の女を乗せる。その女も降りる。誰とも大きな出来事はない。現実はこんなものかもしれない。2020/07/04