河出文庫
香具師の旅

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  • サイズ 文庫判/ページ数 265p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309407166
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0195

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

翔亀

56
終戦時20歳と三島由紀夫と同年の生まれ。1971年と戦後かなり経った後の作品集(直木賞)だが、戦争体験が色濃く反映している自伝的な作品。しかしここに描かれる戦争体験は、戦争責任を問うのでも(戦後派作家)、恩寵喪失体験でも(三島)、不条理を抉り出すもの(小島信夫)でもない。初年兵であったり、テキヤであったり、周縁(網野善彦のいう無縁に近い)の庶民の哀歓が、小説の構築力とか美的な文章とか無縁のところで、訥々と描かれる。登場する人物が時代に流されているようで、今は望めない"したたかさ"を感じるのはなぜだろうか。2014/12/12

hit4papa

55
ミステリ翻訳家で個性的なタレントであった故田中小実昌氏の直木賞受賞作を含む短編集。戦中に青春時代を過ごした著者の、私小説風の作品が収められています。ざっくり言うとどの作品も下半身絡みのネタですが、そこはかとない哀愁と切なさが漂っており、下世話な話しだけに終わっていません。戦災孤児を多数引き取って暮らす復員兵の友「浪曲朝日丸の話し」、聴力にハンデのある娼婦とのひと時「ミミのこと」二作品が直木賞受賞作。その他、テキヤと曲馬団の娘「香具師の旅」、恩人を探す旅で出会った女性は何と「母娘流れ唄」など。【直木賞】2022/07/05

こばまり

48
【再読】哀しくてふてぶてしい生命力が、アッケラカンとした元気を与えてくれる。私が昭和の作品を好む理由はここにあるのかも。含羞の人らしく何度読んでも捉えどころのない不思議な魅力。氏が女性にモテモテであったことも肯ける。同年生まれで共に東京大学に在籍した三島由紀夫との比較論を展開する解説も面白い。2017/02/26

アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯

35
『浪曲師朝日丸の話』と『味噌汁に砂糖』が印象的。引用 / ぼくは子供のときからおふくろに意志が弱いと言われてきた。しかし意志が弱いのを意志の力でなおそうというのは論理的にも実際にもむりなはなしで /2016/01/12

NORI

25
1979年直木賞。人生の場面場面で出会った印象的な人とのエピソードを綴った短編。コレといった主張やオチなどがない作品群。解説によると「書き手も読み手も、小説に"意味"を求め過ぎる。堪え性がない」そうで、そこから敢えて外れてみた小説とも言える。すっかり惚れ込んだ浮気相手が作った味噌汁が、砂糖を入れたらしくなんだか甘ったるくて、その瞬間気持ちが萎え、結局妻の元に戻っていく「味噌汁に砂糖」だけはオチがあったとも言えるけど。何年か前に若者言葉的に話題になった「蛙化現象」を思い出した。2025/06/22

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