河出文庫<br> 文字移植

河出文庫
文字移植

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  • サイズ 文庫判/ページ数 152p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309405865
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

現代版聖ゲオルク伝説を翻訳するために火山島を訪れた“わたし”。だが文字の群れは散らばり姿を変え、“わたし”は次第に言葉より先に、自分が変身してしまいそうな不安にかられて…言葉の火口へあなたを誘う魅力あふれる代表作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

87
カナリア諸島の島の1つが物語の舞台。そこの人々が話す言葉はスペイン語だ。そこで<わたし>は、ドイツ語で書かれた"Der Wundepunkt im Alphabet"を日本語に翻訳している。テーマの1つは言語及び思考であり、互いの言語構造が持つ齟齬である。<わたし>は締切の切迫感に追われ、また名指すことのできない諸々の状況や、訳のわからない人物たちとの遭遇に悩まされる。なにしろ、ドラゴン退治で名高い聖ゲオルクまでが登場する。しかも、彼は<わたし>に味方してくれないのだ。まさに多和田葉子の世界がここにある。2013/08/10

kasim

34
カナリア諸島のバナナ園を臨む一軒家で、聖ゲオルクを描く現代小説の翻訳作業、という魅力的な設定だし、刺される竜や肉のイメージが繰り返し強調されるのに、わざと感覚や情動に訴えない、ぱさぱさした書き方に思えた。終盤、冷たい孤立に加速度がついて、ほぼカフカ。作家の持ち味としてよく言われる翻訳の問題はよく分からなかった。私の力不足のようです。ピエロ・デラ・フランチェスカのミカエルを「気持ちが悪」く、「うつろな残忍な疲れ切った満ち足りない目つき」と評するのが面白い。2020/10/15

あ げ こ

11
向こう岸に渡す。放り投げる。文字を、言葉を。移植する試みの不毛さ。難しさ。途方のなさ。取っ掛かりのなさ。息苦しさ。心許なさ。突き刺さるような、むず痒いような、無神経に傷口を触られるような、不快な痛みの多さ。立ち塞がれ、阻まれる事の怖さ。立ち塞がり、阻み、奪おうとするものへの嫌悪。噛み合わなさ。上手くいかなさ。苛立ち。焦り。みな境目を持たず、輪郭を持たず、大きな一つのうねりと化し。追い掛けて来るかのよう。落ち着かない。落ち着かない。覚束ない。ソワソワする。何も頼れるものがない。こうなれば自分も走るほかない。2017/03/03

Roy

6
★★★☆☆ 現実と翻訳の物語を行き来する不思議で難解な物語だった。2008/08/26

ネムル

5
作家と翻訳者、二つの言語の間の裂け目に際どいバランスで立っている。翻訳か、文字の移植か……批評性が強く晦渋だが、ラストの現実と翻訳を行き来するドタバタ感はなかなか笑える。2009/01/11

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