内容説明
文化の深層を鋭く見抜き、古今東西の歴史と芸術を自由奔放に逍遙した渋沢盛期の珠玉の評論とエッセイ集。三島由紀夫や稲垣足穂、ネルヴァルやコクトー、ナボコフなどに捧げたエッセイや同時代の書評の数々、地獄絵をはじめビアズレーやシュルレアリスムについての美術評から、ニーチェやフーコー論に至るまで収録した、選りすぐりの傑作批評集。
目次
地獄絵と地獄観念
御伽草子の魅力について
奇怪な花、とりかへばや物語
東と西の地獄絵
三島由紀夫覚書
三島由紀夫の手紙
『サド侯爵夫人』の思い出
難解ではない『死霊』について
足穂アラベスク
星の王さま、タルホ〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
31
☆☆☆ とりかへばや物語、地獄絵、ビアズレー、マンディアルグ、ネルヴァル、リラダン、シュールレアリスム、O嬢の物語、飯田善国など興味は尽きない。スーザン・ソンタグによれば、ポルノグラフィー的想像力の行きつく果ては死以外にはないという。 2023/02/23
双海(ふたみ)
24
『倉橋由美子全作品』の推薦文が好い。「観念の卵。抽象の芽。これを日本の風土で育てるのは至難の業だが、倉橋由美子さんは終始一貫、小説のなかで観念の卵をあたため、抽象の芽に水をやってきたのである。(中略)若者諸君、今こそ私小説を蹴っとばして、倉橋さんの全作品を座右に置きたまえ」2014/10/16
Royalblue
4
澁澤による評論、エッセイおよび自らが翻訳した作品に収められた解説を纏めたもの。サドを巡る筆禍事件から「表現の自由とは、単なるお題目にすぎない。具体的なのは自由な表現でなければならない」(p213)などと「自由」という概念の範囲を問い質す項は非常に興味深い。尚、前半には立て続けに三島に関連する評論が叙されるが、これらは後年に刊行された”三島由紀夫おぼえがき”(私は未読)にも収録されており、今回はこの著書の予告編としても愉しませてもらった。2016/02/11
OKKO (o▽n)v 終活中
3
【終活本】2021/11/04
ぐうぐう
2
タイトルが示す通り、洞窟内の偶像をそのまま受け入れる大衆とは違い、澁澤は狭く暗い洞窟から出て、あくまで自身の目と頭と心で文学や映画や絵画を愛でる。だからこそ、世間の評価とは違う価値観で作品の真実を射抜く。それが一番端的に表現されているのが、ここに収録されている三島論だ。2008/12/26