河出文庫<br> 銀木犀

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河出文庫
銀木犀

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  • サイズ 文庫判/ページ数 130p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309404912
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

銀木犀の繁の中には、ちょうど少年ひとりが身を屈めて休むことができる隠れ処があった…樹木に蔽られた古い庭に通う燈水のまえに現れた奇妙な少年は誰?降り続く雨の中、樹に沈みゆく燈水を描いた、文庫オリジナル作品。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

161
「死んだ鳥の躰の中にある卵を食べるとね、ずっと少年のまゝでいられるんだよ。」これまでも少年の無垢さ故の純粋な悪意にたじろぐことはあったけれど、この話のそれはもはや悪夢のように酔わす。銀木犀の両腕に包まれて少年は眠る。少年、燈水のみが知る銀木犀の卵は蛍の灯火で静かに明かりを灯し、濃密でひそやかな雨は少しずつ少年の抵抗を奪う。あまりにも美しいものはどこかこわい。 とても詩的な描写に心地よく酔っていたらこちらまで取り込まれてしまう。卵は抵抗のできないいきものだから、あまり摂りすぎると罰があたるんだよ。2019/02/09

❁かな❁

157
僕は待っていたんだよ。きみが来るのを。セルロイドのような月が耀く夜も、水烟があがるほど激しい雨の夜も。樹木に蔽われた古い庭の奥にある銀木犀。きみは僕のまなざしに少し怯えていたね。僕はその心配そうな疑り深いまなざしにやっぱりきみだと思ったんだ。僕の呼吸、鼓動に耳をすまし次第にきみの呼吸も重なっていく。碧い闇の中、気怠く目覚めと眠りを繰り返す。卵の中の雛のようにうずくまり抱かれるままに眠るきみ。僕も心地よくそっと柔らかく包み込み微睡む。きみはとうに知っていたはず。ずっと一緒だよ。仄かな香りに包まれておやすみ。2019/02/09

しいたけ

104
美しく整った文は、風を捕まえるように流れるように読み進められる。「銀木犀の吐き出す溜め息」は、少年にしか聞こえないような気がする。桂花陳酒を呑めば、下戸である私のような者にも聞くことができるのか。あとがき『金と銀』にて作者が、初期の作品ゆえ現在もっとも注意深く避けている「〜のように」を連発していると書いている。全く気にならない、初期でもこの格調かと驚くような文章だったため、あえて「〜ように」多用の感想にしてみる。あげる意味がないように思う。2017/06/24

みも

97
金木犀ではない。銀木犀である。金木犀より香りが淡く、金木犀のように誰もが感知する匂いではない。だがしかし、仄かに放つその芳香は、読者が気づかぬうちに夢幻の霧の中に絡め捕る。そう…少年がまどろみから深い眠りに落ち、ついには永遠にその古木に同化してしまったように…。夏・雨・透明感…そこには圧倒的な孤独がある。そして幽玄かつ流麗な文体は妖艶さをも内包する。著者ご自身によるあとがきから察すると、銀木犀に託した暗喩は、自然を踏みにじる人類への警鐘、もしくは復讐か…すなわち「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす」2019/11/02

(C17H26O4)

87
微睡みの沼。目醒めているのかいないのか。目醒めたはずなのにまた眠りの泥に沈む躰。鬱蒼とした古い庭の銀木犀が誘う。僕の腕でおやすみ。そのまゝずっと。降り続く雨の気怠さと銀木犀の密やかな芳香。委ねればいい。いいのだ。それを求めていたのだから。怖がることはない。2020/10/08

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