河出文庫<br> 陥没地帯

河出文庫
陥没地帯

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  • サイズ 文庫判/ページ数 171p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309404363
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

「物語」はとうの昔に始まっているのだし、とうの昔に「事件」は終わっている。風景の中心はからっぽのまま、西風が砂塵を巻き上げ、群生植物の茂みは斜面にしがみついている…。著者が初めて書いた伝説の小説、待望の文庫化。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

harass

24
どこだと特定してない場所と時代の登場人物たちの『信頼出来ない』語りと、作者?というか『批評家の視点』というべき語りが入り混じる。繰り返しでてくるキーワードがいくつかあり読んでいる途中になんのことを言っているのかを推察しながら読み続ける。『物語』が背後にあるのか?と推察していくのだが、『物語』自体を思いつくこと自体を批評されていることに気がつく。一般的な小説の『物語』=筋を拒否していて、イメージの連なりと重層的な語りと異様な文体で構築された言語空間が築かれ本の終わりに消え去るのを感じるのだ。反小説の傑作。2014/06/09

kthyk

17
世界は物語を読む事で知られたが、19世紀以降、読まれる世界は誰でも知る世界に代わった。それは終わりではない、新しい作家と作品の誕生なのだ。言葉により構築された世界。矛盾、曖昧、反復、模倣等々による現代社会の言説的磁場。西風が舞う砂地にしがみつく群生植物。夕方、迷路のような市街地からの散歩者を乗せた路面電車の停留所には瓜二つの食堂兼ホテルが並んで建つ。カウンターの窓越しの砂地の風景は、市街地と同じ、中心がなく空っぽ。事件は始まっている。終わりはない。これは時間と空間が重なり合う模写画のようなTOKYOかも。2022/04/17

しゅん

13
反復される構造があって、砂のように流れる時間があって、因果律に定まった物語がない。小説が、歌のない音楽のように進み続けても一向に構わない。そう嘯くような言葉の連なり。ドゥルーズ『差異と反復』の応用のようにも読めるし、ヌーヴォー・ロマンへの意識も感じられる。母と子、虚構と真実、架空の姉、海といったモチーフが寺山修司を思わせることが意外だった。寺山と蓮實は同世代で、映画によって青春を形成した同士でありながら、関連を見出しづらい。この小説を読んでいる時に浮かんだ寺山的情念には虚をつかれた。2022/02/24

mstr_kk

9
読んだのは何度目かわかりませんが、僕はこの小説がものすごく好きなんですよね。ひたすら美しくてエモい、それだけのパズル。音楽のように、モチーフが交錯して組み合わされる。虚心に読んでいると、まるで映画のように情景が浮かび上がってきて、それに酔いしれることになります。難しさなどまったくない、ただ美しいだけの言葉。だから、これはある意味、究極の文学だといえるのではないでしょうか。2021/11/18

ハイザワ

2
何かが物語られようとした瞬間に生まれながらも途端に立ち消えていく語り手たち。空間と時間の定位が困難なままめくりめく語りの闘争が繰り広げられるさまは、そのまま辺りを覆い尽くす砂塵の舞う『陥没地帯』というテクストそのものであろうとしているように思う。短い小説だったけれどとにかく難しかった。2017/03/09

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