内容説明
終わりかけた僕らの十代最後の夏。愛すべき季節に別れの挨拶をつげ、駆けぬけてゆく少年たちの、愛のきらめき。透明なかげり。ピュアでせつない青春の断片をリリカルに描き、圧倒的な支持をうけた永遠のベストセラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
511
いずれも「文藝」に掲載された4つの短篇を収録。主人公はそれぞれに違うが、ある種の連作だろう。私の中にある鷺沢萌のイメージとは大きく違った小説群だった。そう、例えば石田衣良のそれのような。石田衣良はほとんで読んでおらず、直感的な印象だが)。一種の風俗小説である。もっとも、芥川賞にもこうした系譜はある。例えば村上龍『限りなく透明に近いブルー』や金原ひとみ『蛇にピアス』などがそうだ。ここで描かれている十代の若者たちは、'80年代後半のリアルなのだろうか。だとすれば、世代は違うとはいえ自分自身の⇒2018/01/21
みも
134
僕にも憶えがある。居たたまれない焦燥感を常に抱え、そのくせ不遜なまでに大人達を批判し、自我の暴発のやり場を探していた日々。そんな刹那的な危うい均衡の中で、時間を持て余しながら狂騒の渦に生きていた。とても怖かった。手探りの先にある未来が余りに儚く見えて。表題作、「誰かアイダを探して」「ユーロビートじゃ踊れない」「ティーンエイジ・サマー」の初期4篇。いずれも10代の少年の一人称で語られるが、夭折への憧憬に似た気配が漂う。紛れもなく著者の先鋭で繊細な心情が反映されているのだろう。既にその才能のきらめきが眩しい。2025/04/28
新地学@児童書病発動中
116
ユーロビートとかパブリック・エナミーとか80年代の青春が甦ってくる内容だ。青春の光と影を鮮やかに表現する詩的な文章に痺れた。底の方に切なさを滲ませながら、それでも軽快さを感じさせる文章を読んでいると、短い人生を駆け抜けっていったこの作家の生き方を考えてしまう。4つの作品が収録されているが、その中では「誰かアイダを探して」が一番の好み。切なくて美しい短編だ。主人公の僕が出会った19歳の少女。19歳というのが大事な点で、20歳だったらこの短編は成立しない。アイダの姿は、夜空の花火のように読者の脳裏に刻まれる。2017/05/22
佐島楓
75
モラトリアムの中で若さをもてあます少年たち。いつかは誰もが懐かしむ季節。ひりひりするような痛みと快楽に満ちた世界。夜明けが来るとしたら、それは大人になってしまったときなのだろうか。2017/06/26
ココ
34
繊細で、殺伐として、純粋で、熱い少年たちの4つの物語。。行き場のないあやふやな恋心が切ない。女性作家さんなのに、男性の「透明なかげり」を描くのがめちゃくちゃ旨い!2019/09/15