内容説明
シュルレアリスムは今世紀最大の芸術運動といわれている。アンドレ・ブルトンに導かれて早くからこの世界に関心を持ちつづけていた著者は、その豊かな鉱脈から心ひかれる作品を数多く発見し、みずからの気質を映し出す鏡とした。60年代には、そのシュルレアリスム絵画をめぐって数多くのエッセイが書かれたが、本書はそれらをまとめたもので、『幻想の画廊から』につぐエッセイ集である。
目次
レオノール・フィニー、魔女から女祭司まで
マックス・ワルター・スワンベルク、女に憑かれて
ゾンネンシュターン、色鉛筆の預言者
ポール・デルヴォー、夢のなかの裸体
ハンス・ベルメール、肉体の迷宮
バルテュス、危険な伝統主義者
ルネ・マグリットの世界
キリコ、反近代主義の亡霊
マックス・エルンスト論
ベルメールの人形哲学
ファンム・アンファンの楽園
パウル・クレー展を見て
ビザンティンの薄明あるいはギュスターヴ・モローの偏執
ルドンの黒
ゴヤあるいは肉体の牢獄
ロメーン・ブルックス、アンドロギュヌスに憑かれた世紀末
遠近法・静物画・鏡、トロンプ・ルイユについて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
41
ここで取り上げられているのは、フィニー、デルヴォー、ベルメール等シュルレアリスム及びその近縁の画家たちだ。澁澤が中世やルネサンスの絵画を語る時、その造形の深さと独特の審美眼に驚くが、これらシュルレアリスムの絵画に至っては、ほとんど独壇場の感を呈するかのごときである。ただ、美術批評家の中にはそれを主観的、印象的だとしてあまり評価しない向きもあるようだ。いいのだ。我々は澁澤が1枚のタブローをどのように見、またその画家をどんな風に語っているか、すなわち彼の関心のありかと、語りの妙味をこそ愛してやまないのだから。2013/03/03
阿部義彦
15
澁澤龍彦さんのシュルレアリスムの絵画に関するエッセイ集の第二弾、第一弾は『幻想の画廊から』だそうです。60年代に数多く発表された絵画に関するものが中心で、文章が出された当時には、作者自身が存命中だったのも有りました。私もダリやキリコ、マグリット、エルンスト等は知ってましたが、スワンベルク、ゾンネンシュターン、ハンス・ベルメール、等は初めて知りました。中でもポール・デルヴォーは凄く惹き付けられました。また、澁澤さんのクレーに関する感想が私が感じてたものと近かったのも収穫でした。第一弾も読んでみたい。2024/04/23
りっとう ゆき
8
美術作品に関するエッセイ。一章ごとに一人の画家を取り上げ、その作品の背景や根底にあるものを考察する。取り上げられた作品は一般人のわたしには馴染みのないものが大半だが、掲載された画像やネットで見て、なんとなく共通性があるように思えた。人間が誰しも多かれ少なかれ持っているしかし秘められた部分、例えばフェティシズムなどをぐらつかせるようなものが多い気がする。また、遠近法とはリアルな表現のような気がしてしまうが、カントのいうとおり、このようにしか世界を捉えられない我々の人工的な表現なのだというのが目から鱗だった。2022/10/16
フリスビー
7
『幻想の画廊から』からつながる美術エッセイ集。著者が一番好きなのがスワンベルクだというのが何となくはまっていて面白い。2013/03/17
おこめ
4
シュルレアリスム作品についての短い評論、エッセイ集。(『幻想の画廊から』の続編にあたる。) 具体例は見知った作品も多く、興味深く読めた。批評というより、自身の愛するものについて語っているという印象。作者の趣味と感性ゆえに出てくる思考なのでは、という感じも。批判的な意味でこういう人もいるけど、良い意味でも言えるはず。 マグリットの『永久運動』に ついふきそうになるのはわたしだけか。2009/04/10