内容説明
―優しさに込められた惨酷、惨酷に秘められた哀しみ―少女から女へと華麗な変身をとげる美しくも多感な蝶たちの青春。好奇心ではなく欲望を、少年ではなく男を愛することで、美しい女友達の枷から逃れようとする心の道筋を、詩的緊張を込めた文体で描く。第96回芥川賞候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メタボン
22
☆☆☆☆ 最初の方は文章の修辞がまどろっこしかったり、間違いのように感じられたが、感性の鋭さに惹き込まれるうちに、のめり込むように読了した。瞳美とえり子の関係性が秀逸。そして麦生との快楽の共有により、瞳美がえり子に対し優位に立ち、「纏足」が外れる。男は女を自立させるための「もの」でしかない。感性を沸き立たせる鮮やかな小説だった。2017/03/03
pirokichi
12
先日近所にあった有名な古書店が閉店した。最終日に訪れたところ、店主(70代)が感銘を受けた本として宮沢賢治などの本と共に、その場には異色の本書が並んでいた。20代の頃に一度読んだのだが良かったという事しか覚えてなくて、ぱらりとめくった文章の美しさと読みやすそうな文字の大きさに掴まれて再読を決意した。『蝶々の纏足』。なんて美しく残酷で甘やかなタイトルなのだろう。肝心のラストはやはり忘れてしまっていたのだが、読んだとたん涙が溢れてしまった。「私、心に纏足を飼っている」。えり子は瞳美の中にいつまでも棲み続ける。2021/02/21
海恵 ふきる
11
瞳美は、常に自分を牽制する美しく愛らしい存在であるえり子に勝ち、引き立て役の地位から逃亡するために、麦生という男の子との恋愛に溺れていく。気の弱い引き立て役の女の子が美しき復讐を遂げるよくある筋立てかと思いきや、物語はせつない真実を瞳美(と我々読者)に告げる。少年少女の淡く同時にどろどろした未形成の感情が、感覚的な表現により、むしろ直截的に感じられる。それは生々しく、濃く、それでいてどこまでも透明だ。2020/03/02
rio
8
彼女の作品を読むといつも感じるのですが、何か女性でなければ分からない部分を描いているようで、普通の男で、しかも読解力が低く、恋愛遍歴の平凡な僕にはこの本の本質にたどり着くことはできない気がします。2015/03/01
ムー
6
束縛するのとそれから逃れたいのと2人の少女の話、よくあるかもと思う。短いのでさっと読めた。ここのところ1冊1冊が中々読み終わるのに時間がかかっていたのである意味気分転換になった。良かった。2019/03/19