出版社内容情報
夏から秋へと季節が移り変わろうとしている時、不思議な男がベイリーさんの農場で暮らすようになった――。空想と現実のはざまを歩き、神秘的な自然の心を描き上げた話題作。
著者
C・V・オールズバーグ (オールズバーグ,C・V)
1949年、アメリカ・ミシガン州生まれ。ミシガン大学、ロードアイランドデザイン学校で彫刻を学ぶ。彫刻と絵画は、ホイットニー美術館や近代美術館に展示されている。『急行「北極号」』で1986年度コルデコット賞受賞。ほかに『ジュマンジ』(ほるぷ出版)など多数。
村上 春樹 (ムラカミ ハルキ)
1949年、京都府生まれ。早稲田大学文学部卒業。著書に『ノルウェイの森』(講談社)、『海辺のカフカ』(新潮社)、訳書に『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)、『西風号の遭難』にはじまるオールズバーグ作品など多数。
内容説明
空想と現実のはざまを歩き、ミステリアスな世界を描き出すオールズバーグの最新絵本。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
134
オールズバーグの絵本は本当に不思議な雰囲気をかもし出してくれるものが多いです。さらにこの物語では、ぶつかってしまった人物が不思議な人で言葉もしゃべれなければ人間社会の生活感を持っていない人物です。大人の人は予想がつくのでしょうが、子供だと不思議がるのかもしれません。楽しい物語です。2019/04/11
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
101
秋の風景が美しい幻想的な絵本。農夫のベイリー氏は、自宅付近で一人の男を車ではねてしまいます。家に連れ帰りますが、言葉も話せず、自分の名前さえ覚え出せません。医師の診断は「記憶喪失」。やむなく居候させることになります。言葉は話せないものの、穏やかな性格の男は家族に溶け込んでいきます。でも彼の周りでは不思議な出来事が続きます。〈今年の秋は何かがおかしい……〉。ある日、小高い丘の上にのぼったベイリー氏は自分の目を疑います。赤やオレンジに色づく秋の風景が広がる中、家の周りの木々だけは緑のままだったのです……。2015/03/01
ムッネニーク
84
99冊目『名前のない人』(クリス・ヴァン・オールズバーグ 著、村上春樹 訳、1989年8月、河出書房新社) オールズバーグらしいパステル画が読者を奇妙な世界へと誘う。 表紙のインパクトの強さはまるでホラー作品のよう。実際、序盤はまるで怪奇物語でも始まるかのような不穏さを携えているが、ストーリーが進むにつれてその風合は徐々に変化してゆく。物語の内容とマッチするように、イラストの色調は全体的にほんのりと赤みがかっている。この色使いの巧みさは流石の一言。 〈「また来年の秋にね」と〉2024/07/23
どんぐり
78
村上春樹翻訳によるオールズバーグの絵本作品。道で倒れ、記憶を取り戻すことのないままベイリーさんの農場で世話になる「名前のない人」。男はウサギの化身か、雁の化身か、はたまた木の葉の化身か。豊潤な実りをもたらす秋の訪れを少し先延ばし、「また来年の秋にね」と去っていく。彼は、いったい何者だったの? 2025/04/16
キムチ
67
当然ながら、絵がとてつもなく好み。画の背後に吸い込まれそうな引力を覚える。原題は「The stranger」だけど...。時の流れを止める力を持った不思議な男。表紙の大きく見開いた眼。自身の力を認識してなさそうな、ナチュラルな優しさがあるような温度感。動物が本能で擦り寄りたくなるような空気を持っているのだろうか。桃源郷に入り込んだような読書タイム。また、次作を手に取ろう2023/09/22