出版社内容情報
フッサール現象学の核心を改めて問い、これまでの理解を批判的に検討した上で、教育学・社会学・医学・心理学への応用可能性を拓く。
内容説明
いまこそ現象学にできること。その根本動機と方法をあらためて明らかにし、現代思想などによるこれまでの現象学理解を批判しながら、教育学・社会学・医学・心理学への応用可能性をひらく―本質学の核心へ、新たなるマニフェスト!
目次
総論1―ヨーロッパ認識論における「パラダイムの変更」
総論2―本質観取をどのように行うか―現象学の方法と哲学的人間論
現代哲学と現象学―現代思想と現象学批判
教育学と現象学―教育の本質学―教育学の指針原理の解明
社会学と現象学―社会の本質学のために
医療/医学と現象学―「正しい判断」の不可能性を超える
心理学と現象学―本質論からみた人間心理
現代現象学の諸潮流―本質を獲得するとはいかなることか
著者等紹介
竹田青嗣[タケダセイジ]
1947年、大阪府生まれ。哲学者。早稲田大学名誉教授
西研[ニシケン]
1957年、鹿児島県生まれ。東京医科大学・哲学教室教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りょうみや
21
複数の著者が自分の専門分野で現象学について語る内容。読み物としておもしろくはあるのだけど、未だに現象学というものはしっくりこない。人の主観はみな違う相対主義を乗り越えるためにできることは結局は話し合って共通理解を探っていくしかないという理解でよいのだろうか。現象学は実用性の面では使いやすい道具ではないと思っている。2022/07/20
ほし
16
現象学の意義と、それが実際に教育学や社会学、心理学などの各分野においてどのような役割を果たしうるかについて述べられた一冊。各章ごとに執筆者が異なり、難解さや読み心地も変わっています。その中でも西研さんによる総論は平易で、哲学的知識が何もなくても読めたりするのですが、個人的に西研さんのその開かれた哲学のスタンスがとても好きなので、その章だけでもお勧めできる一冊です。現象学的な対話によって共通理解を取り出していくという本質観取。この考え方は育児や教育、ケアや組織づくりなど、多様な場で活かせると思います。2021/01/13
ゆきだるま
3
現象学とは、真理を求めるものでもなく、相対主義でもなく、神も登場せず、人間の共通の認識=普遍(本質?)を追求するもの、というようなこと、かな。それを、哲学、教育学、社会学、医療、心理学の立場からそれぞれ語っていて、軸が見えて分かりやすかったし、考えもしっくりきた。それと、本題とはずれるかもしれないけど思ったのは、例えば何で人を殺しちゃダメなのか、じゃなく、みんなだれかに殺されたくないよね、だから殺人はだめって決める、って、そういう、認識を信じるやりかたでいいんじゃないかな。2021/02/06
⇄
2
”何か”について伝えられる本だったのかはさておき、医療における記述は面白かった。2023/08/25
kumoi
1
根拠を出せと言われれば、観測事実や統計データを出すのが普通になっている。自分の実感から判断しましたというのはまず通じない。多様性が蔓延した現代において、唯一の客観的な営みは自然科学であると感じられる。因果関係をたどる論理的思考が流行り、本質を取り出そうとする文系的な思考は独我論だとみなされる。これだけ自然科学が重宝されているのは、テクノロジーが人間の可能性を広げているという実感があるためだ。ただし、自然科学の十八番である物理法則は信念対立を乗り越える方法たりえず、その可能性は現象学に託されている。2021/07/31