出版社内容情報
美についてのあらゆる観念の解体を通して、美を現出させるアドルノ美学の最高峰にしてその批判理論の到達点をしめす名著、新装復刊。
内容説明
アドルノの遺作。美についてのあらゆる観念の解体をとおして、美を現出させるアドルノ美学の集大成にして、その哲学の到達点。
目次
芸術、社会、美学
状況
醜、美、技術の範疇について
自然美
芸術美、“天象”、精神化、直観性
仮象と表現
謎特性、真実内容、形而上学
一致と意味
主観対客観
芸術作品の理論
普遍性と特殊性
社会
補遺
芸術の起源に関する諸理論 補説
旧序文
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ryoma Okamura
1
平然として醜いものを平らげる芸術の肛門的満足や誇りはすたれかけている。形式法則は醜において無力なものとして敗北を喫している。醜の範疇と必然的にそれと同様にこの範疇の対立物、つまり美の範疇とはこのように徹頭徹尾ダイナミックなものなのだ。この二つの範疇は定義による固定化を嘲笑する、つまりこれらの範疇によって、いかに間接的であろうと規範を作ろうとする美学が思いつく類の固定化を嘲笑する(p.82)。2021/01/23
Ryoma Okamura
0
魔術を脱した世界においてはこの世界が認めることがなくとも、事実としての芸術はスキャンダルであり、この世界にとって許しがたい魔術の写しにほかならない。だが芸術がこの事実を平然と背負いこみ、盲目的に自らを魔術として提出するなら、芸術は真実であるとする自らの主張に反して自らを幻想的行為にすぎぬものへとおとしめ、なおいっそう自らの墓穴を掘る羽目になる(p.101)。2023/02/21