内容説明
13歳のアニエスは作家として華々しくデビューするが、本当の作者は親友のファビエンヌ。小説を書くという二人の「遊び」は、周囲を巻き込み思わぬ方向に―。2023年度PEN/フォークナー賞受賞作。
著者等紹介
リー,イーユン[リー,イーユン] [Li,Yiyun]
1972年、北京生まれ。北京大学に入学し、生物学を専攻。卒業後の1996年にアメリカに留学し、アイオワ大学大学院で免疫学を研究していたが、進路を変更し同大学院の創作科に編入、英語で執筆するようになる。2005年に短編集『千年の祈り』を刊行し、フランク・オコナー国際短編賞、PEN/ヘミングウェイ賞、ガーディアン新人賞などを受賞。また「天才賞」と呼ばれるマッカーサー・フェローシップの対象者にも選ばれた
篠森ゆりこ[シノモリユリコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
61
正反対の性格でありながらも一心同体だった少女達が無聊を託つ余り、世の中を欺き、嗤う為に起こした、ある悪戯。だが、その悪戯の余波で少女達が分かたれた時から長い別離は始まってしまったのだ。傑作と評された本を出した少女を大学ではなく、フィニッシング・スクールに入学させるという時点で取るに足りない存在と知ら示される皮肉よ。また、やっと帰還したアニエスに向けられたファビエンヌの別れの言葉が痛烈。小学生だった時に迷惑を掛けても一緒にいてくれるも引っ越し後、連絡も遠くなり、今は連絡も取れない親友の事を思い出しながら読了2024/09/29
アナーキー靴下
59
とても良かった…。少女時代の私自身と重なり胸が痛いけれど。何より、聡明なファビエンヌに魅了されてしまう。文通で主観視点、客観視点のダブルで自分を伝達するなんて。アニエスは今も夢の中にいるおばかさんで、ファビエンヌが考えてくれた「あたしら」の中にいて、だからミセス・タウンゼントの「このときにどう感じたかいちいち書かなくても、あなたが感じていることが削ぎ落とされた文から伝わってくる」の意味がわからず仕舞いなのだろうか。アニエスとファビエンヌの境遇や関係性に、アン・ファインの『チューリップ・タッチ』を連想した。2024/11/06
ヘラジカ
59
素晴らしい。間違いなくここ最近のイーユン・リー作品の中では一番だ。少女二人の関係と同じように読み手にとってすらも微妙な危うさに満ちた作品ではあるが、作者は綱渡りのような曲芸を見事に成功させている。殆ど「虚無感」や「徒労感」のようなものを感じさせる着地点から、最後の数ページで華麗なる”残心”を見せつけられた。この小説の核心は何か、アニエスとファビエンヌが作り、そして壊した世界とは何だったのか。正直に言うと答えは掴めていない。それでも霞がかっていながら前へと開けたあの終幕には心を動かされた。2024/07/22
pohcho
50
フランスの田舎に暮らす二人の少女、ファビエンヌとアニエス。感性豊かなファビエンヌは自分が書いた物語をアニエス名義で出版することを思いつき、大人を利用して実現するがその本が大きな評判となり・・。ゴーストライターみたいな話になるのかと思ったけど全然違った。線路の上に寝そべって、列車に轢かれて足を失った二人の少女のエピソードが印象的。彼女たちのようになりたかったけれど、なれなかった二人の物語。ちなみに実在のモデルがいるとのこと。その頃サガンが19歳でデビューして十代の少女作家が流行するという背景があったそう。2024/09/20
ぽてち
39
第二次世界大戦後のフランスの片田舎を舞台に、共に13歳の2人の少女のつながり(友情・愛情・憎悪)を描いた作品。語り手はアニエスだが、2人の関係において主導権を握っているのはファビエンヌだ。ある日、ファビエンヌの提案で本を書くことになり、彼女が語る物語をアニエスが筆記していく。遊びで始めたことが、2人の思いもかけない展開をする。物語の持つ力や、思春期の少女の残酷さ、都会に憧れる田舎人の思いなど読みどころは多い。初読みの著者は中国系アメリカ人で邦訳も多数ある。図書館に蔵書があったので、他の著者も読んでみたい。2024/08/03
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