内容説明
彗星のように出現し、透徹した論理と華麗な文体で思想・文学界を驚倒せしめた孤高の俊傑、佐々木中。『夜戦と永遠』以前から『切りとれ、あの祈る手を』へ向かう力強く飄然と舞いふみ留められた躍動する思考の足跡。未発表・完全版宇多丸×佐々木中ロング対談収録。
目次
「生存の美学」の此岸で
「永遠の夜戦」の地平とは何か
詩
政治的霊性
生への侮蔑、「死の物語」の反復―この小説は文学的に間違っている
“磯崎的世界”の盤石と動揺―書評・磯崎憲一郎著『世紀の発見』
終わらない、と彼は言った
この世界における別の生―霊性・革命・芸術
魔魅に見える
自己の死をいかに死ぬか
暴力の現在―自然発生性とスローガン(討議者:市田良彦・〓(すが)秀実・長原豊)
自分の小説観を変えた3冊
真に死に切る
ONCE AGAINが革命だ(対談者:宇多丸×佐々木中・佐々木敦(司会))
足ふみ留めて
良書、しかし前提するところ多く屈折を孕む―書評・ポール・ヴェーヌ著『フーコー』
狂おしい影を滲ませた陽光の旅の記録へ―書評・野崎歓著『異邦の香り』
著者等紹介
佐々木中[ササキアタル]
1973年生。作家、哲学者。東京大学文学部思想文化学科卒業、東京大学大学院人文社会研究系基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程修了。博士(文学)。現在、立教大学、東京医科歯科大学教養部非常勤講師。専攻は哲学、現代思想、理論宗教学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
39
作家宗教学者である著者の書評対談インタビュー講演などをまとめたもの。雑多で散漫であるが、元気の出るというか、アジテーション・断言が心地よい。『切りとれ、あの祈る手を』を気に入った人なら是非。 「仰る通り、この『社会』が、『現在』が、そしてその『現在の社会』を生きている『自分が分からない』という漠然とした不安が存在する。その不安を利用して『知と情報』を所有していると思い込んでいる側が、所有していないと思い込んでいる人々を搾取している状況がたしかにあります-搾取しているとはっきり言いましょう。」2015/05/24
寛生
34
【図書館】坂口安吾の憲法9条についての言及がブラボー。95頁から始まる「自己の死をいかに死ぬか」の議論が散漫しすぎ。123頁あたりからのハイデガーの死だが、ホロコースト後(に限らず)にどうしてこういう死の理解しかお二人共できないのか理解しかねる。60頁のアガンベンの誤読ということだが、仮にそうだとしても、佐々木氏自身が賛賞するウィトゲンシュタイン自身がどこかで誤読も解釈/理解の一つだと言ってたと思うが。デリダも誤読を堂々とやってのけたじゃない?それと、リオタールの「大きな物語の終り」も自明じゃないかな?2014/02/22
鷹図
9
拾遺的な選集だが、通底しているのは「私が生きている今この時代が特別であってほしい」「自分の死が世界の終わりと同時であってほしい」という幼稚な、あるいは「オウム的な」終末論への批判、つまり「人は死ぬ。必ず死ぬ。どうせ死ぬ。どうせ死ぬなら…」というアホな論法からの脱却を説いている(偶然にも昨日、オウムの元信者で逃走中の高橋容疑者が捕まった)。それを元手にして行う村上春樹の『1Q84』に対する批判的な読解は、(まだ1Q84を読んでいないので本来私には何も言う資格がないんだけど…)説得力がある(ように思う)。2012/06/16
白義
7
佐々木中が結構フットワークの軽い人物だというのがよくわかる評論集。寄せ集めという通り、暴力論からヒップホップ、現代思想まで広い話題が並んでいる。中核は管理的な発想から離れたオルタナティブな生の探求と、ニヒリズムの徹底でもハイデガー的な賭けでもない死の捉え方にある。特になにげに三人の佐々木が揃った宇多丸との対談が一番面白い。マイルス・デイヴィスやJBとドゥルーズやフーコーは同世代である、ってのは確かにそうだ。基本的に霊性を求めての文学へのアジテーションはどの本も変わらないので、好きな人はたまらないだろう2011/12/11
多聞
6
死に関する論考(自分自身の死生観が理解の邪魔になったため、要再読)、書評、歩行のススメ、対談など。宇多丸氏との対談で、著者が哲学者と同年代のミュージシャンと映画監督を同列に並べて語るくだりはまさに目からウロコ。これだけで本一冊分になりそうなアプローチは新鮮だった。ちなみに、不覚にも「死々累々だよぉ」に萌えてしまったのは内緒だ(笑)2011/06/24