内容説明
『「子ども」のための哲学』の著者がはじめてニーチェの核心に迫る哲学入門。
目次
序章 『星の銀貨』の主題による三つの変奏
第1章 ルサンチマンの哲学―そしてまたニーチェの読み方について
第2章 幸福・道徳・復讐(新新宗教;見えないヨーロッパ―その原点の点描;よく生きることヤテ、そらナンボのもんや?;怨恨なき復讐―われわれの時代のルサンチマン)
第3章 永遠回帰の哲学―あるいはまたニーチェへの問い方について
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
28
永井均によるルサンチマン(怨恨)をメインテーマとしたニーチェの読み解き。著者の言説は、いわゆる多数派的な解釈でないところが面白いし、ひとつひとつが腑に落ちる。ニーチェ自身がカントの思想を哲学的には全く理解していなかったということ、特に存在論や認識論をニーチェが主題として語ろうとしたことは一度もなかったこと、にも関わらずその後の哲学史研究家たちの多くがニーチェの仕事を伝統的な狭い哲学概念に取り込んで解釈し勝手に評価していること、等々は改めてニーチェの思想を考える上でとても参考になった。(→)2014/07/20
yamikin
8
いつからだろうか、大衆が気軽に会話の中で「ルサンチマン」という言葉を口にするようになったのは。だが、当然ながらその言葉を使っている大半の者はニーチェなんて読んでいないわけで。『超訳ニーチェ』は読んでいるのかもしれないけど。著者によると、ルサンチマンはあくまで自己「肯定」にまで至る感情のことであり、単なる鬱屈とか怨念みたいなものとは区別されるものなのである。つまり、原典にあたれということです。古典は取っ付きにくいので『○○入門』ばかり読みがちだけど、原典を複数回読んだ方が絶対インテリになれるわけです2011/06/18
ころこ
6
最近プラトンを読んだことで、今まで再読して気付かなかった、ソクラテスがイエスのパロディであり、ヨーロッパ的思考を覆っている元凶だという箇所が印象に残りました。プラトンの対話篇を読んだときに感じた、当たり前のことを滔々と語るソクラテスの凡庸さや道徳的決めつけに違和感を持っていた根源が、ニーチェの道徳批判と重なる所にあったのではないかという直感は、確信のようになりました。トランプ現象で有名になったPC批判を、否定神学的だというのは、まさに神は死んだというニーチェの言葉そのものでないかという偶然にも驚きます。2017/04/09
きざはし
4
道徳とはルールをすり替えることによる弱者の復讐(ルサンチマン)である。道徳的価値判断は現在では常態化しすぎて意識できなくなっているが、それはキリスト教(さらに遡ればソクラテス)が敷衍させた倒錯した価値判断と言える。そしてニーチェは、このすり替えられたルールを乱用し二重の勝利を味わう強者たちを強く嫌悪する。←こんな感じ?いくつかの寄稿の寄せ集めであり、順序立った説明をしている本ではありません。2010/08/08
袖崎いたる
3
永井均のニーチェに準じる(殉じる?)ことのない道徳批判、あるいはルサンチマン批判の書。永井のニーチェ本はニーチェとの距離感がおもろい。さながら学生時代の旧友との付き合いを時を経た今批判的に冷静な目でもって語り聞かせてもらっているような。ルサンチマンに対抗する形で、 『世間体至上主義の倫理学』なんて本を構想していたことが開陳されておるp33。この着想はp47のキェルケゴールの三段階論における中2階=倫理的段階(ニーチェ風には平民的)の話と繋がってるね。恥のレベルで生きるのがベストという。それ以外は転落かし?2024/08/22