内容説明
傷つきやすいこと、傷つけてしまうこと、他者と生き延びること。ケアの現場と現象学とを結ぶ泰斗の原点にして、まったく新しいレヴィナス入門。
目次
第1章 レヴィナスの生涯と作品
第2章 外傷の哲学―レヴィナスの核
第3章 逆流する創造―初期の世界論と他者論
第4章 暴力批判論―第一の主著『全体性と無限』
第5章 後期思想『存在の彼方へ』
第6章 外傷としての主体から深淵の空虚へ
第7章 メシアニズムを捨てて―信仰なき宗教について
第8章 レヴィナスの歴史哲学
終章 死者の復活―回復論としての歴史
補章1 消えたアルベルティーヌ―メルロ=ポンティという鏡に映るレヴィナス
補章2 レヴィナスとすき間のない世界―貧困地域の子ども支援を例に
著者等紹介
村上靖彦[ムラカミヤスヒコ]
1970年、東京都生まれ。基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第7大学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授、感染症総合研究教育拠点CiDER兼任。専門は現象学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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YASU
2
合理的主体による理性的思念―が大前提の哲学的常識から逸脱しているレヴィナスの難解さに輪をかけて、村上氏の記述もわかりにくい。なんとか読み進めていって最終盤、補章2までたどりついてやっとエッセンスが掴めたような気がする。他者とは何者か、それへの出会いと応答。福祉的再配分から排除される人々への態度など。たしかにそれは、メジャーな正義論や社会論からはこぼれる以外ない。ゆえにこうした感受性が意味を持つ。村上現象学は、難解だが追い続けようと思う。2025/02/10
元アルパカ
1
介護や看護などケアの場に携わる著者が、レヴィナスの哲学をホロコーストや戦争の心的外傷から出発する哲学として読む本。自我ではなく他者を起点にするところを魅力的に感じた。他者からの呼びかけに先立ってすでに応えているというアナクロニズムのアイデアは奇妙に実感と一致するところがある。実現不可能とされる「倫理」のアイデアなど飲み込み切れない部分についてもゆっくり向き合ってみたい。2024/01/15
雨宮菖蒲
0
村上靖彦氏によるレヴィナス本に挑戦するのは二冊目だが、難解で今回も通読できなかった。が、飛ばし飛ばし読めそうな部分は読んだので許してほしい……という気持ち。2025/02/14
佐倉惣五郎
0
つい最近『レヴィナス 壊れものとしての人間』を読んでからこっちの存在を知ったので、急いで補章だけ読んだ。補章2における「身代わり」の複数性という提案はとても重要で、場合によっては哲学の手も離れて広く論じられるべきものだと思った。レヴィナスの読み方は様々だが、僕はこのケアと福祉の倫理という見方がいちばん好きだ。2024/10/06
りゅう
0
難しかった、、、2024/08/26