内容説明
移送される父を追い、自らアウシュヴィッツ行きを志願した息子。6人の家族、引き裂かれた運命、母の祈り、砕かれた希望、そして、すべてを乗り越える親子の絆。
目次
第1部 ウィーン七年前…(「ユダヤの血がナイフから落ちるとき…」;民衆に対する裏切り者)
第2部 ブーヘンヴァルト(血と石―ブーヘンヴァルト強制収容所;砕石機 ほか)
第3部 アウシュヴィッツ(オシフィエンチムという町;アウシュヴィッツ=モノヴィッツ ほか)
第4部 生存(死の列車;マウトハウゼン ほか)
著者等紹介
ドロンフィールド,ジェレミー[ドロンフィールド,ジェレミー] [Dronfield,Jeremy]
1965年生まれ。イギリスのフィクション・ノンフィクション作家。1997年、デビュー作The Locust Farm(『飛蝗の農場』創元推理文庫、2002年、新装版2024年)がベストセラーに
越前敏弥[エチゼントシヤ]
翻訳家。1961年生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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つちのこ
47
ノンフィクション小説の体裁をとっているが、内容はホロコーストの生還者となったグスタフ・クラインマン氏の日記をもとに事実に則して描かれている。強制収容所を生き延びたユダヤ人の物語は数多あるが、特筆すべきことは、グスタフとフリッツ父子の5年半にわたる数奇な運命を克明に記録したことにある。アウシュヴィッツからの死の行進を経て、父子それぞれが収容所を転々と移送されていきながら、死の淵でも生きる希望を捨てない姿には深い感銘を受ける。ホロコーストはいくつもの旅から成る犯罪である…という著者の言葉の重みを反芻した。2024/11/20
さぜん
45
ナチスの強制収容所を初期から解放までを経験し生還した父と息子がいた。父が残した日記、多くの証言と資料を基に小説風に描いたノンフィクション。これが人間のなせる業かと何度も胸が締め付けられた。余りにも不条理に奪われる命。彼等の運命を決めるのは何なのか。息子のフリッツは、生き延びるための鍵は運ではなく神の恵みでもない、他人の思いやりこそが鍵だと回想する。こんな過酷な状況下でも人を思う事で希望が生まれる。戦争は無くならない。しかし、平和で日々の幸せを得る事は誰もが持たなければいけないと痛切に感じる。2025/01/22
星落秋風五丈原
29
アウシュヴィッツをはじめとする収容所に、家族がずっと共に暮らすことは難しかった。ナチスドイツはユダヤ人を選別するからだ。老人、子供、虚弱体質は、労働力として認められず、優先的に殺された。健康な人たちも、時に危険な実験対象にされ、時に気まぐれに殺され、偶々「~人殺せ」とノルマを課された収容所にいただけで殺された。次々と一緒だった家族は列車や収容所で離ればなれになった。有名なアンネ・フランクのような例外もあるが、それでも父親と娘は引き離された。2024/12/12
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
19
ちょっと長いですが序文の引用を。「ホロコーストの話は数多くあるが、この話は特別だ。中略。ナチスの強制収容所を1930年代末という最初期の大量拘束から”最終的解決”とその後の解放まで、すべてを経験したユダヤ人はほとんどいない。そして、父と息子がこの地獄のすべてをはじめから終わりまでともに乗り越えた例は、わたしの知るかぎりほかにない」。ホロコーストの物語では”いつ”ということがとても重要に思います。複雑なヨーロッパの勢力地図で、拘束と解放のタイミングは様々で、川を隔てた彼岸と此岸の距離で喜びか絶望か降り注ぐ↓2025/01/02
uniemo
19
アウシュビッツを描いたノンフィクションは何冊か読んでいますが本作は小説風に描いているのでとても読みやすく過酷な状況下でも親子愛や友情を忘れない主人公にとても感情移入して読んでいて辛い部分もありました。2024/12/01
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- 和書
- さくららら