出版社内容情報
グウェン・ストラウス[ストラウス,グウェン]
著・文・その他
笹山 裕子[ササヤマ ユウコ]
翻訳
内容説明
わたしはまだこの世に生きた痕跡を残せていない。今諦めたら、何も残らないじゃない。フランスでレジスタンス活動に身を投じ、逮捕され、収容所で囚われの身になっていた九人の女たちは、一九四五年四月一五日、強制収容所からの移動中に脱出を決行する。前線を目指す逃亡の旅と、それぞれの人生の旅。そのふたつの物語には、つねに固い友情の絆と苦境さえ笑い飛ばすユーモア、そして何よりも生きのびようとする強い意志があった。戦争とは、生きるとは何かを問いかける、傑作ノンフィクション。
著者等紹介
ストラウス,グウェン[ストラウス,グウェン] [Strauss,Gwen]
詩人、短編作家、随筆家。ハイチで生まれ、幼少期を過ごす。現在は南フランスで暮らし、ドラ・マール・ハウスで芸術家の滞在研修プログラムに携わっている
笹山裕子[ササヤマユウコ]
翻訳家。上智大学外国語学部英語学科卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キムチ
62
おこがましくも「読了」というまでに7日間旅をした・・と言っても暖衣飽食の22C日本で。今でも各地で戦火とジェノサイド、汚い爆弾が使われている地球。100年も前の話ではない。9人の闘士らが生病死(老はなく)を共に歩いた旅は1945/4 ナチスの強制収容所からの移動中の脱走に端を発し、6日間の逃亡の後に前線突破 米兵に出合った時間迄の記録。筆舌に尽くしがたいとよく言われるが、真に。仏レジスタンス、各々の事情で身を投じた彼女達の一人エレーヌが筆者の大おば。殆どが優秀な学歴を持ち、今ならキャリアの女性。2022/10/27
たまきら
39
たまたまだが、切り裂きジャックの被害者5人のルポ「The FIVE」とナチスの暴力から逃げ切った9人のレジスタンス女性を追った「The NINE」を隣り合わせて本棚にたて、ほぼ同時期に読み始めた。殺された女性と生き残った女性。どちらも男による暴力にあった。それは同胞であっても変わらない。けれども生き残った女性たちは手を取り、協力し合い、進み続けた…。ちょっとした日常の描写やふとした心の動きの描写がとてもリアルで、時を超えた普遍のものを感じさせる。戦いは形を変えて続いている気がする…。2023/06/30
つちのこ
33
戦争犯罪を隠ぺいするナチスが取ったやぶれかぶれの策ともいえる死の行進と、そこからの逃亡劇を詳細に記録しているドキュメンタリー。驚きなのは主人公の9人が、ナチスに対抗したヨーロッパ各国のレジスタンスの女性だということ。ホロコーストについては、被収容者のユダヤ人側、加害者のナチス側からの手記や証言は数多あるが、この設定は貴重ではないだろうか。解放後のパリでドイツ兵に加担したとして丸刈りにされた女性たちや、その子供たちの「ボッシュの子」についても触れており、これまで読んできた関係書が一本の線に繋がったと思う。2023/05/12
かもめ通信
24
第二次世界大戦中のフランスで、レジスタンス活動に身を投じた女性たち。密告、拷問、行方不明の夫、刑務所での出産……。愛する夫や生まれたばかりの娘、家族や恋人と引き裂かれた彼女たちだったが、収容所で虐待に耐え、つねに固い友情とユーモアをもち、支え合い励まし合い続けて、生きる希望を失わなかった9人。これは感動の物語だ。だが感動だけで終わらせず、読者の目を様々な「真実」に目を向けさせるべく、用意された枝葉が見事に息づいている優れたノンフィクションでもあった。2022/11/21
uniemo
17
とても興味深く読めたノンフィクションでした。第二次世界大戦末期主にパリでレジスタンス活動の結果ナチスに捕らわれ収容所に入れられた9人の女性の脱走がメインテーマです。すべての女性が活動的で魅力があるので沢山の人が殺され本人達も逃げているという状況下としては陰鬱な話だけになっていないところが良かった。2022/12/10