出版社内容情報
幕末の動乱期、賤称廃止に奔走し、職業的特権を失い13代・最後の弾左衛門となった弾直樹の生涯とは何だったのか。書き下ろし。
塩見 鮮一郎[シオミ センイチロウ]
著・文・その他
内容説明
最後の浅草弾左衛門はどう生きたか!?徳川幕府が築いた弾左衛門制度の最後を務めた男は、幕末から明治維新を迎える激動の嵐のなか、「賎称廃止」を目ざして奔走する。かれは何を得、また何を喪ったのか。著者がライフワークとした弾左衛門、最後の書き下ろし。
目次
第1章 十三代になぜ抜擢か(白紙の原稿用紙;生誕地が判明;江戸時代の部落;関東の譜代と外様;関西各地の反応)
第2章 江戸の金融資本(小太郎の十三代弾左衛門襲名まで;問屋禁止令は武士対町人;鼻緒一揆は農民対部落民;本命は皮革業;小太郎の覚醒)
第3章 維新の渦に巻かれて(幕府軍の一員;順天堂の医師;小太郎の解放令;周司、最後の夢;徳川と決別する)
第4章 弾直樹の頂点(洋靴起業と茶利革;弾家存続か賤称廃止か;弾直樹の頂点;反対一揆の敵;弾直樹の晩年)
補章 直樹の望みは生かされたか
著者等紹介
塩見鮮一郎[シオミセンイチロウ]
1938年、岡山市生まれ。河出書房新社編集部を経て、作家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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イトノコ
23
図書館本。1840年。摂津国の穢多の有力者の子・小太郎は、関八州の穢多の頭領である弾左衛門の13代目を襲名。折しも幕末の動乱が迫る中、彼は穢多解放を目指す。/この弾左衛門が主人公の長編小説を書いた著者の思い入れから美化されている部分は多分にあるであろう、また維新後の穢多解放令に本当に彼が果たした役割も不明である。解放令は幕府の体制を否定する明治政府の思惑により出され、当の穢多たちも現状にとどまる事を選んだ。どこかで見たような構図。しかし穢多の革加工技術を活かした軍靴の工場を作った彼の志は本物だったのでは。2021/08/04
りー
23
「弾左衛門」は、江戸時代に幕府から認められ、関八州の穢多・非人の長として、全国の被差別部落に大きな影響力を持った家系。しかし9代目以降は血が続かず、養子をとって家を継いだ。この本で取り上げられているのは13代目、最後の弾左衛門=小太郎=明治に改名し「弾直樹」となった人物。弾左衛門制度は<もう一つの幕府>だったようで、これまで知らずにきたのが不思議なくらい。飛鳥・奈良~鎌倉を経て江戸、明治に至る差別の興味深い歴史を垣間見ることができた貴重な本。要点がまとまっていて、弾左衛門の入門書として最適だった。2021/06/15
ori
11
そもそも弾左衛門とは誰かすら知らずに読んだのだった…。弾左衛門とは江戸時代、幕府から権限を与えられた全国の穢多・非人の頭で13代目が最後。最後の弾左衛門は穢多身分の廃止を願う。明治に身分は廃止されるが多くの者が平民と暮らすのを躊躇し反対したとあった。確かに今より日々の近所付き合いも季節ごとの挨拶も何倍も濃いだろう時代に教育もないままいきなり混ざれというのも無茶な話だ。人権教育もないまま身分の差などないと言われても態度を変えない人がほとんどだろう。制度だけなくせば解決するというものではない。2025/02/02
ウォーカージョン
5
歴史は主観だとはいえ、皇国史観や左翼の史観のように自分の主張のための材料として歴史を利用するのは本当の史観とは言えない。この本には赤いフィルターはかかっていない。13代目の解放への思いとは真逆の「解放運動」。「解放」という名のもとに団結させ縛り付ける。いまだに運動のために解放を許さないのは本末転倒。作者の主観は穢多と農民にあり、明治の元勲を腐す。そういう視点があったのかと感心。当時の農民の実態が知れた。文体はエッセイか小説か。その分13代目の思いが伝わりやすい気もする。2019/06/29
kikimimi01
0
☆32019/04/04