- ホーム
- > 和書
- > 文芸
- > 海外文学
- > その他ヨーロッパ文学
内容説明
廃墟の石灰工場で聴覚の研究を続けていた男はなぜ妻を射殺したのか―。加害と被害、妄想と錯乱が反転しながら破滅へとつきすすむ戦慄の代表作。日本にベルンハルトを知らしめた伝説的長編、43年目に新訳。
著者等紹介
飯島雄太郎[イイジマユウタロウ]
1987年生まれ。京都大学文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
hasegawa noboru
27
いきなりの冒頭、夫による夫人射殺事件の犯人として、主人公コンラートが登場するのには驚かされる。五年前にいとこから買い取ったという石灰工場での二人の生活はどのようであったかが、周辺人物への主人公の語り、間接話法、伝聞の積み重ねによって明らかにされていく。例によって改行、段落分け、章立て一切なしで続く、砲弾みたいなことばの塊り。救いようない絶望の砲弾。読むに進まず、息苦しいが、それでも惹かれるものがあるのはなぜだろう。作家の今ある社会への激しい怒りのトーン故か。例えば主人公の世界認識のことば。<何を見ても2025/03/16
ノブヲ
23
老コンラートは、積年の夢だった石灰工場をとうとう手に入れた。その工場は、強盗や未解決の殺人事件が多発する物騒な地域の一角にあった。ある日、コンラートは護身用にと集めていた銃で、障害のある妻の頭を撃ち抜いた。この物語のおおよそは、そのショッキングな事件の後日談、噂話といった体裁をとっている。日本でも最近は頻繁に殺人事件がニュースになるが、その度に思うのは、なぜ頭のイカれた連中(犯人)の人格やプロフィールにこちらが精通しなければならないのか?といった憤りである。読後の感触は、そのときの気持ちによく似ている。2026/05/05
rinakko
8
新訳にて10年ぶりに再読。あらためて凄まじい読み応えだった。ぐねぐね絡みついてくる呪詛節が堪らない。人里離れた場所にある元石灰工場に引き籠り、障害のある妻と暮らしながら聴力についての論文の執筆をしていたという主人公が、その妻を殺害するにいたった経緯を本人の言説からたどっていく。妄想にとり憑かれ明らかにどうかしているコンラートのことが、ふっといじらしくなったり、身につまされるような気分になったり、空回り続ける理屈と口実に笑ったり。あと、独学の素人の悲哀も感じた。(ノヴァーリスの『青い花』は酷だったのでは…)2025/02/12
Mark.jr
7
20世紀オーストリアを代表する暗黒作家Thomas Bernhard。キャリア前半を代表する一冊である本書も、全く改行が無く同じ語が反復されながらも、閉塞感と独特のグルーヴを感じさせる、あの唯一無二の文章が味わえますが。一人称の独白による罵詈雑言とは違って、第三者的キャラクターの思考を別の人物から又聞きするような形式を取っているため、狂気と混乱を内側からではなく外側から眺めているかのようなグロテスクさがあります。2026/02/17
バナナフィッシュ。
7
あまりに妄想癖のある男の物語。とにかく生産性のあることはしないし、一日中奇妙な実験を繰り返している。友達もいないだろう。こんなに意味のない会話を覚えている人物もすごいというか、ヤバいやつと認識した上でメモをしていなければ成立しない設定。英語で言う岩の下に住んでいるような二人組を街中でも見るけれど、それぞれの地獄というか、愛憎まみれた生活はあるのだろう。2024/11/04




