内容説明
迷宮のような路地で見つけた写真集、不死の老人、ショアの記憶、聖書物語など、イスラエル文学紹介の第一人者による日本語版オリジナル・アンソロジー。ウーリー・オルレブ(国際アンデルセン賞受賞)、シャイ・アグノン(ノーベル文学賞受賞)など、世界が高く評価する作家の傑作を精選。
著者等紹介
母袋夏生[モタイナツウ]
長野県生まれ。ヘブライ語翻訳家。エルサレム・ヘブライ大学修士ディプロマコース修了。1998年、ヘブライ文学翻訳奨励賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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天の川
59
ヘブライ語で書かれたアンソロジー。ヘブライ語は国を持てなかった人々の生きる支えであり、イスラエルでの言語混乱を回避したという訳者のあとがきに納得する。各作品に付けられた詳細な著者の紹介の背景の多様さが複雑な問題を抱える移民国家であることを物語る。宗教人居住地区に暮らす母がキブツで暮らす娘を訪ねる表題作、男性がアラブ人キリスト教徒と判明した後の若いユダヤ人女性の反応からわかり合えなさを知る「コーヒーふたつ」、ショアを予感させる「最後の夏休み」、とても怖かった「老人の死」…複雑な地に暮らす様々な人生があった。2023/12/14
ヘラジカ
57
イスラエル文学を俯瞰できるアンソロジー。現代社会を切り取った掌編から、心胆寒からしめる不気味な不条理劇、聖書のリライトや御伽噺のアレンジまで、多くの作家・作品が収録されていて非常に満足度が高い。大学生の頃に読んで感銘を受け、他に邦訳がないのを残念に思っていたアブラハム・B・イェホシュアと再会できたのは僥倖であった。(”the tunnel”は近年英訳が出版されてNYTの年間ベストにも選ばれているので是非とも邦訳をお願いしたいところ)色々なイスラエルを知れる良い作品集だった。この手の企画は本当に大好きだ。2023/08/28
夏
35
タイトルと装丁に惹かれて。イスラエルの小説を読んだことがなかったので、どんなものかと思って読み始めたのだが、とても良かった。全てヘブライ語で書かれた短編集。日本においてヘブライ語を翻訳できる人は本当に貴重だと思う。翻訳者の方々がいるおかげでわたしはこの物語たちに出会えたわけで、本当にこれらの素敵な物語たちを日本語に訳してくれてありがとうございますという気持ちでいっぱいになる。イスラエルの文化など知らないことばかりだったけれど、この本を読んでイスラエルに興味を持った。もっとイスラエル文学を読みたくなった。2024/08/15
マリリン
34
独特な世界観と味わいを感じるヘブライ文学短編集。ヘブライ語の“ホロコースト”は燔祭を意味し、“ショア”は災厄、破壊を意味するとは知らなかった(ウイキより)。特に印象に残ったのは、イリッド・アミエルの死を纏ったような掌篇三作。「オーニスサイト」に登場する鳥は...そうだったのか。移民が集まった地で、恋人たちのわかり合えない悲しみを描いた「コーヒーふたつ」。生きている老人を葬る「老人の死」と「息子の墓」。「女主人と行商人」怖い。2つの根っこ...タイトルの意味が深い「ショレシュ・シュタイム」。印象的な傑作選。2024/02/13
ズー
16
短編小説や、昔から伝わる話的なものまで、あらゆるヘブライ語で書かれてきた作品の短編集。宗教や文化の違いで理解できない話がありつつも、ほとんどが異文化を感じつつ、おかしみやユーモア、悲しみ、人として感じる感情と同じようなものを行ったこともないこの国の話に感じられて、海外文学結構読むけど、かなり読書で遠くまで来たなって感覚で、読書旅行しているようで楽しかった。終盤の「人間の誕生」では戦争まみれ差別まみれの人間に一石投じられてハッとするし、「葡萄酒を…」は酒好きとしてハッとさせられた😂2023/11/26