出版社内容情報
”THE白人社会”のケンブリッジ大学で奮起した痛快なシスターフッド、鍵付きの日記にしたためた”沈黙させられてしまった声”??自由で大胆な知性で描く全9篇のストーリーコレクション
著者情報
1984年ナイジェリア生まれ、プラハ在住。ケンブリッジ大学卒業。18歳で小説『イカルス・ガール』が話題に。『グランタ』誌ベスト・ヤング・ブリティッシュ・ノヴェリスト、サマセット・モーム賞など多数受賞。
内容説明
若くより世界から注目を集める女性作家が、独創性溢れる筆致で描く、スターの炎上、姉妹団と兄弟団のバトル、日記に閉じ込められた声―ビガリュールな想像力を無数の鍵が繋ぐ9のストーリーコレクション。ペン・オープン・ブック賞選出作。
著者等紹介
オイェイェミ,ヘレン[オイェイェミ,ヘレン] [Oyeyemi,Helen]
1984年ナイジェリア生まれ。4歳のときロンドンへ移住。18歳で『イカルス・ガール』を書き上げ、ケンブリッジ大学コーパス・クリスティ・カレッジに入学、社会政治学を専攻。これまで長編7冊、短編集1冊を刊行している。『グランタ』誌ベスト・オブ・ヤング・ブリティッシュ・ノヴェリスト、サマセット・モーム賞など多数の受賞歴を持つ
上田麻由子[ウエダマユコ]
上智大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
54
正直に言うと掴み所がない文章である。苦戦しつつも一度、その世界へとドライブに入ると何度も頭の中でその世界観に向き合いたくなる。理解できなくても。そんな不思議さに満ちた短編集。「ケンブリッジ大学地味子団」は拗らせ女子の「地味」の基準への執拗な考察に苦笑。同時に自省から蘇る、似たような思考回路が生み出した奇行を思い出し、悶絶せざるを得ない。そして地味子団が敵対するべトンコート団の書棚入れ替え作戦で強奪した本を読み、渋々ながら「趣味だけはいいのよね」と認める場面に頬が緩んでしまう。2023/10/10
ヘラジカ
47
分かりやすいテーマ、平易な文章かと思いきや、読み進めるうちにふと気づくと脱出困難な迷宮を彷徨っている。そして同時に読んでいるときの感情も迷子になり、愉快がったら良いのか不気味に感じたら良いのかが分からなくなる瞬間があった。これまた一筋縄ではいかない作品集だ。「他に類を見ない」という言葉が当てはまる文学作品は多数存在するものの、この短篇集ほど相応しいことも稀である。しかし、どの作品も素晴らしく印象的で、本全体が読む楽しさを存分に味わわせてくれた。オイェイェミ、名前は知っていたがこれからも要注目だ。2023/06/17
星落秋風五丈原
22
ある章の脇役が他の作品にも登場。鍵と錠前がテーマ。『イカルス・ガール』の著者だったんですね。「ドルニチュカと聖マルティヌスの日の鵞鳥 」ベースは赤ずきん。2023/06/30
かもめ通信
19
「さまざまな色が寄せ集まり混じりあい」「話がひとつのことから別のことへと、思いもよらぬ形で魔法のように進んでいく」物語の中に迷い込んでしまいそうな、妖しげな美しさ。2023/08/07
スイ
15
一筋縄ではいかないもの揃いの短編集。 昔話風に仕立てているものも含め、現在の先端のところで鋭くて眩しく光っているような作品たちだった。 「溺れる者たち」と「ドルニチュカと聖マルティヌスの日の鵞鳥」が特に好き。2024/03/24