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出版社内容情報
二十年ぶりに「芸術家晩餐会」に招かれた小説家の脳裏に噴き出す忌まわしき過去の記憶、そして悔恨、呪詛、愛と挫折が現在を切り裂く。暗黒の巨匠ベルンハルト後期の異様なる傑作。
著者情報
1931年オーストリア生まれ。最も重要なドイツ語文学者のひとり。『消去』『凍』『破滅者』『アムラス』『地下』『昏乱』などが訳されている。ゲオルク・ビューヒナー賞など国際的な受賞多数。1989年没。
内容説明
暗黒の巨匠トーマス・ベルンハルトが国際的評価をえる画期をなした後期の重要作にして世界の残酷を切り裂く最も異様なモノローグ。
著者等紹介
初見基[ハツミモトイ]
1957年生まれ。ドイツ文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイトKATE
19
樵る(きこる)は、木を切るを意味しているが、物語に木は登場しない。主人公で小説家である「私」が、大嫌いなアウアースベルガー夫妻の晩餐会へ訪れるまでの間に、心の中に澱んでいたアウアースベルガー夫妻をはじめとするオーストリアの芸術業界に対する憎しみを長々と語っている。「私」の語りで、”私は安楽椅子で考えた”という文章が繰り返し登場して、それ妄想じゃないかとツッコミたくなった。樵るとは、トーマス・ベルンハルト先生にとって、堕落したオーストリア文壇を言葉によってぶった切ったことだと推測してしまう。2025/01/11
中海
5
多分3冊位読んでいて、墓場とか、じめっとした部屋の感じの「じっとり感」を感じていたが、今回はあんまりその要素は感じられず、ただの悪口が永遠に続く。当時モデルとして存在していたという人物が指摘されていたにも関わらず、外見、育ち、内面、あらゆる面から辛辣に悪口が表現されている。「話したことないけどあの人なんか気持ち悪い」とかいうレベルでなく、我慢して何十年もお互いに歳月を過ごしてこなければ出てこないような年季の入った悪口。どうしてそこまでして?と思うが、本当に表面的には紳士的に接しているんだろうなあ2023/05/02
バナナフィッシュ。
3
100%の純度の毒舌本。かつて時間を共に過ごした、当時愛していた人に対しても毒を吐く。いや、愛していたからこそ、その時との違いに憤りを感じるのだろう。いつもながらに毒舌の造語がすごい。2023/02/05
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2
★★★★★+★ ラスト数頁に喩えようのない恍惚があった。2024/02/22
三月うさぎ(兄)
1
冒頭の単語が「野鴨」で、イプセンの芝居『野鴨』のことだとわかるので、読んでおいた方がいいかなあ、と呟いたら、超有識者の方から「必須じゃないけど読んだ方が面白い」と伺いました。 いや、必須でしょ。これもう、「ホアナは死ななくてはならなかった、自殺しなくてはならなかったのです、私たちがふたたび出会えるように、」(p.259)の意味が、吐きそうになるほど、『野鴨』のラストと響き合う。お前らの再会のためにホアナや野鴨ちゃんが? というわけなので、ぜひイプセンの『野鴨』を読んでからがお勧め。→2024/10/27