出版社内容情報
大富豪クレソン家の人々による、愛とエゴが渦巻く皮肉な悲喜劇。奇跡的に発見された、フランソワーズ・サガン最後の未発表作。
内容説明
奇跡の未発表作品。死後十五年を経て発見された幻の遺作。人生の悲しさを優美に笑う、極上のサガネスク。風光明媚な土地に立つ悪趣味な大豪邸「ラ・クレソナード」では、冷めきった心の住人たちが虚飾の晩餐を囲んでいた。“禿鷹”と呼ばれる当主、病に臥す威圧的な後妻、遊び人で居候の義弟、若く冷酷な息子の妻、自動車事故で死の淵から生還し、「腑抜け」になった跡取り息子…そこに一人の女性が訪れ、愚かで美しい愛の波乱が幕を開ける。エレガンスの巨匠が遺した、永遠の輝きを放つ最後の長篇。
著者等紹介
サガン,フランソワーズ[サガン,フランソワーズ] [Sagan,Fran〓oise]
1935年、フランス・カジャルク生まれ。作家、脚本家。1954年、19歳の時に『悲しみよこんにちは』でデビューし、一躍時代の寵児となる。その後、愛と孤独をテーマとする作品を次々に発表し、人気作家として活躍。『スウェーデンの城』をはじめとする戯曲や、映画の脚本も手がけた。2004年没
河野万里子[コウノマリコ]
1959年生まれ、翻訳家。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。上智大学外国語学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
93
1954年「悲しみよこんにちは」で鮮烈なデビューをし、2004年に亡くなったフランソワーズ・サガン。彼女の未完の遺稿を息子が編集し、2019年に出版した。フランス文学界で話題になった書。物語はトゥーレーヌ地方の金持ちアンリの息子リュドヴィックと、その義母ファニー・クローリー夫人のスキャンダラスな恋を軸に展開する。主人公が交通事故で生死の境を彷徨い、精神病患者として帰ってくる姿が、著者に重なって見える。いかにも愛と性が主題の軽いタッチのフランス文学。2022/01/16
星落秋風五丈原
33
事故で重傷を負い妻からないがしろにされているリュドヴィックと義母ファニーとの道ならぬ恋。リュドヴィックの父がアンリが結婚してるのにファニーに恋。この「打ちのめされた心」というのはリュドヴィックの今の状態のことなのか、アンリがファニーとの結婚を発表したこの後書かれる状況のことなのか。2022/08/25
くみこ
21
未完の遺稿とはいえ、今になってサガンの小説が読めるとは。フランスの田舎で繰り広げられる人間模様。見事な自然描写や人物一人一人の造形の素晴らしさ、そして何より恋に落ちる瞬間の美しさは、何十年も前に夢中になったサガン作品そのものです。滑稽で孤独で美しい人生の物語でした。ぷっつり途切れるように終わっているので、後は好きなように想像するしかありません。相応しいのはハッピーエンドではなく、少し皮肉で寂しい結末でしょうか。2022/06/29
テツ
13
サガンの死後かなりの年月が経ち発見された原稿を息子さんが修正し世に出したらしい。フランスの片田舎で繰り広げられる人間模様と恋。それぞれが幸福を追い求める姿や、自らの意思や思考とは関係なく恋に落ちる瞬間のどうしようもない美しさとやるせなさなど、ある程度生きてきた人間の多くが身に覚えのあるありきたりな内容ではあるけれど面白かった。文学は話の大筋だけが肝ではないというのがよくわかりますね。未完の作品なので途中でぶつ切りのような形で終わりますが、突然の終わりが余韻を高めてくれていて、これはこれで素晴らしい。2022/08/13
Kei.ma
12
帯に堂々と書かれた「フランソワーズ・サガン奇跡の未発表作品」。フランス車が悠然と佇む表紙。これは、奇跡の一冊ではないかと思わず快哉を上げた。舞台はパリ郊外の田舎町にあるラ・クレソナードなる一族の邸宅、登場人物はこぞって我こそは不幸で幸せを求める権利があるとばかり複雑な内面を見せる。そんなシュールで真面目そうな顔をした男女を斜め横からみると滑稽で、思わず貴方は正しいと頷いてあげたくなるのだ。物語に登場するクラシックカー、その一族とよく調和していよう。そうよ、どちらもギクシャクとしていて、でも一途で。2022/02/13
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