出版社内容情報
五大宗教研修センターで学ぶ純真無垢な若い尼僧が、恋とお金に翻弄されながら世の真実を知る。老子や菩薩も登場する新しい宗教小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
76
久々えん・れんかの新作。 いやー、政府に干されてるんじゃないかと心配してました。 またぁ、問題作。 まるで人の虫歯をいじるようなテーマ多いですね。 国が作った宗教研修所で5大宗教の人々が集まってきます。で、綱引きが主要活動だったりする。しかも宗派対決で死人まで出る。 変な小説です。面白いけど。 初出版は今年日本で。 中国では正規出版できないみたいだなあ2021/09/25
ヘラジカ
61
本国で黙殺されることを事前に察知していたとするこの作品は、国によっては発禁で済まされない危険な小説だろう。しかし、それだけに作者の文学への愛情と矜恃、それも迸るような思いが確かに感じとれる。先達への敬意を持ちながら、新たなるアプローチでもって別の道を開拓しようとする熱意。共産主義国家のタブーを通してしか生み出せない新次元を描き続ける作家、閻連科の面目躍如である。この小説が全世界に先駆けて日本で出版された事実を噛み締めたい。この作家の作品に触れるたび何度も考える「世界文学を読む理由がここにある」と。2021/07/24
taku
20
いたずら心のある作品だ。題辞からすでにね。切り絵による菩薩と老師のストーリーだけでも含蓄ある一冊の絵本になる。でも、なぞらえた二人や物語自体に生温くも生易しくもないのが閻連科。五大宗教の研修センターに信徒の綱引き。虚構が明るみにする事をどこまで読み取れたかな。現代中国と宗教のからくり、神の存在と信仰、人の繋がり。姿を現さない神に『沈黙』を思ったが、最後に「神たち」をやっちゃうのか。ずっしり度は他作品ほどじゃなくても、やはり量感があって、これからも読んでいきたい作家。2022/04/01
アリーマ
17
ノーベル賞候補にずっと上がっている中国作家の作品。北京の宗教センターという特殊な学校組織では、仏教、道教、プロテスタント、カトリック、イスラム教の宗教的指導者を一堂に集め教育している。そこで出会った主人公の尼僧と道教の男性僧侶が恋をし、様々な思惑が交錯し…荒唐無稽な設定に聞こえたが、実は実在の組織らしい。軽妙さと生臭さが飄々と入り混じり、風刺と戯画が散りばめられていく。こんな話が中国で出版できるのかと思ったらやはり無理で台湾発だった。一見難解な話に思えるが引き摺り込まれるように読了。★★★★★2021/09/28
スイ
16
いや綱引って!! それぞれの宗教についてや、中国内での各宗教の立ち位置などに詳しければもっと読み込めたのだろうけど、充分面白かった。 思わず笑ってしまう面白さと、触れれば切れるようなシビアさが同居する、さすがの上手さ。 切り絵も良かったなぁ!2021/09/09