出版社内容情報
ホロコーストに収容され、家族を殺された壮絶な体験から導き出したのは希望だった。絶望の淵から立ち上がる力を訴える感動の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉子
67
ユダヤ人というだけで、強制収容され、尊厳をはく奪されながらも生き延びてくださったアディさん自身の物語。地獄にいるようなホロコーストでの毎日を、技術力と知恵と工夫で乗り切っていく。アディさんは世界で一番幸せになることで、ヒトラーに対して最高の復讐になるという。腕に刻まれた数字が痛ましい。この現実を一人でも多くの人に読んで知っておくべきことだと思う。2022/05/03
Nobuko Hashimoto
41
一人の人生でこんなにも次々劇的なことが起こって、それを乗り越えられるものなのかと驚嘆しっぱなしの伝記。5人分くらいの苦労と不運と幸運を一人で体験されたかのよう。ユダヤ人であるがゆえに何度も捕らえられ、とんでもなく辛く酷い目に遭うが、教育と人助けを尊んだ父の教えが著者を生き延びさせた。そして、その精神を受け継いだ著者もまた友人や同胞を救う。家族と友人への思いと支え合いが胸を打つ。高1息子も読んで、2人で大興奮。この本を教えてくれた学生に感謝。2022/08/13
のり
36
あの過酷なナチスの迫害を生き延び、現在101歳のジェイクが語る幸福論。最悪な状況の中、希望を見失いそうな時、やっぱり人間を生かしてくれるのは人々の良心だと思った。1人でも信じられる友、助けてくれる人がいれば、希望を持つことができる。亡き父が、身分証を偽造してでも、機械技術をジェイクに学ばせてくれたおかげで、ジェイクは生き延びることができた。失った家族や友のために、彼は語り続ける。生きているだけで幸せだと思う。TED TALKSも聴いてみたい。2021/09/03
zag2
34
体験していない者にはどうしても理解できないものがあるとは思いますが、それでも「夜と霧」と本書を読んだことには大きな意味があると感じています。NHKの9月の100分de名著はル・ボンの「群集心理」でしたが、群集がホロコーストのような行動に向かっていく時に、これに抗して立ち向かうことができるのか、正直のところ分かりません。しかし、少なくとも冷静なものの見方だけは失わないようにしていきたいと、本書を読んであらためて考えました。2021/10/26
くさてる
33
これまでにもホロコースト関連の本は読んできたけれど、この語りのやさしさと誠実さが、著者が体験した悲劇と同時に存在していることが奇跡のような本だった。本当に恐ろしい地獄のような状況と、そこでも見つかる友情や人のやさしさ、そのすべてを通り抜けたうえで、残った傷と見つけた愛を語る著者の視線はあくまで穏やかだ。「わたしの物語があなたに伝わりますように」という著者の言葉が心に響いた。2021/12/19