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出版社内容情報
5 月の真夜中、死病を抱えたミリアは痛みから外へ駆け出した──。現代ポルトガルの最重要作家による暗黒のロマンス、ついに邦訳。
内容説明
五月二十九日、夜明け前。死病を患うミリアは痛みのあまり通りへ飛び出した。時を同じくして、自殺しようと窓から身を乗り出すミリアの元恋人、娼婦を求めさまよう精神科医の元夫、父親を探す少年と、獲物を探す元兵士。彼らの暗い運命は、誉れ高きゲオルグ・ローゼンベルク精神病院の記憶につながっていく…世界約50か国で翻訳される現代ポルトガル最重要作家による、狂気と怒りと愚かさを残酷に描ききる圧倒的代表作。
著者等紹介
タヴァレス,ゴンサロ・M.[タヴァレス,ゴンサロM.] [Tavares,Gon〓alo M.]
1970年、アンゴラ生まれ。2001年に作家デビュー。著作はこれまでに約50か国で出版され、フランス最優秀外国小説賞、ポルトガル・テレコム賞、欧州若人文学仏学生部門賞、Web文化文芸賞審査員特別賞ほか、国内外で数多くの文学賞を受賞、高い評価を受けている。『エルサレム』はジョゼ・サラマーゴ文学賞、ポルトガル・テレコム文学賞ほかを受賞し、ポルトガル国内でベストセラーとなった
木下眞穂[キノシタマホ]
1992年、上智大学ポルトガル語学科卒業。ポルトガル語翻訳家。ジョゼ・ルイス・ペイショット『ガルヴェイアスの犬』で第5回日本翻訳大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
どんぐり
96
旧約聖書にある「エルサレムよ、もしも、わたしがあなたを忘れるなら、わたしの右手はなえるがよい」の一節からとった書名。冒頭のシーンは屋根裏の窓から飛び降りて死のうとしていた男のもとにかかってきた電話。その声の主は、夜も明けぬ教会の前で胃の痛みにうずくまる統合失調症のミリアである。そこから、複数の人物が舞台劇のように登場し、物語は教会の前で起きる出来事に向かっていく。断片的な文章が過去と現在に連なり一見読みやすくて引き込まれるが、意味を探っていくと非常に理解しづらいものがある。→2022/01/03
蘭奢待
60
不穏なつかみで一気にのめりこませてくれる。クールでダークなトーンで物語は進行する。複数の時系列、複数の場面がやがて1本に収束していくパターン。深みのある思考とセリフを登場人物に語らせている。面白い。2021/07/23
ヘラジカ
55
『ヴァルザー氏と森』以来のタヴァレス。『ポルトガル短篇小説傑作選』の感想で「シリーズ全訳して欲しい」と書いていたので、思っていたよりも早くその一歩が踏み出されたようで喜ばしい限り。悪の構造(加害者と被害者の役割など)を明らかにしようとした主軸は理解できるとしても、細部での結び付きやアクシデントの意図を飲み込めたかどうかは全く自信がない。ここまで説明するのが困難な小説も珍しいだろう。暗黒のエネルギーに満ちた怪作。サラマーゴに激賞されたとしても、この作品が本国ポルトガルでベストセラーになったとは驚きだ。2021/05/23
かもめ通信
29
様々な断片があちこちで結びつき、絡み合って構成されているこの作品のストーリーを上手く説明することは私にはできそうにない。可笑しくもなければときめく要素もないが、陰鬱というわけでもない。なにがどうとうまく説明はできないが、とにもかくにも吸引力がすごい。一読しただけでは細部にまで張り巡らされているであろう様々な意図をつかみ取ることはとてもできない。だが、間違いなく“すごい”ということだけはわかった。いずれまた再読しよう。2021/07/25
taku
17
終始、不穏な雰囲気が覆う。短い章立てで人物が入れ替わり登場するのは演劇のよう。拡散していくかと思えば限られた人々と短い時間の出来事で、ピースが組み上がっていく。暴力、悪意、自分のうちに潜むものはやがて自分を飲み込んでいく。暗さと闇があっても、本を閉じてこの世界から抜け出したい気にはならない。登場人物たちはどこか間違っていて、自分は傍観者でいられるからだろうか。では自分は間違っていないと言えるだろうか。構成も内容も油断ならず、ア-ト系映画のようでもある。2022/07/15