出版社内容情報
17年前に起きた美貌の女子高生殺人事件は、残された者たちの人生を静かに壊していく。悲劇のあとを彷徨う魂の、痛みと祈りの物語。
内容説明
国中が日韓ワールドカップに沸くなか、ひとりの女子高生が殺された。死んだ姉の顔を求めて整形手術を繰り返す妹は、ある日容疑者の家のベルを鳴らし―。黄色い天使の復讐が始まる。現代韓国の痛みを描く重要作家による、哀悼と報復のサスペンス。
著者等紹介
クォンヨソン[クォンヨソン]
權汝宣。1965年生まれ。ソウル大学国語国文学科修士課程修了。1996年、長編小説『青い隙間』で第二回想像文学賞を受賞しデビュー。呉永壽文学賞、李箱文学賞、韓国日報文学賞、東里文学賞ほか数々の文学賞を受賞
橋本智保[ハシモトチホ]
1972年生まれ。東京外国語大学朝鮮語学科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケンイチミズバ
107
喪失からくる遺族の異常行動もわからないではない。殺された姉と同化しようと整形を繰り返す妹の(最初は復讐目的で元容疑者に近づいた)心境の変化を著者は理解して欲しかったようだ。青年を訪ねるうちに彼と彼の家族の不幸も背負う。背景にある他者との痛みの共有というキリスト教的世界観は分かるが、これはミステリーではなく些細な不備の積み重ねとその共感が事件をわからなくする。ちゃんとしゃべらない若者、いいかげんな取り調べなど著者の仕掛けによるもので、ディテールや雰囲気に惹きつけられてラストまでモヤモヤするが嫌いでもない。2021/02/01
星落秋風五丈原
28
登場人物が次々変わるオムニバス。2020/12/16
リッツ
24
美貌の女子高生が殺された、そこから狂いだす周囲の人々の人生、やり場のない後悔の中をさ迷い壊れていく心。作者の後書きを読み、改めて平凡に平和に生きることの奇跡を思う。苦しい生への祈り、鮮烈で深い余韻を残す本だった。2021/02/12
スイ
14
女子高校生が殺され、そのために人生を壊された家族や周囲の人々を描いている。 構成と語り手の選択、配置が上手い。 事件に近づいたと思ったら遠ざかる不明瞭さは、今作の中心人物である被害者の妹の苦しみに重なる。 生活の格差、女性蔑視といった社会問題も、登場人物の生と混ぜ合わせて書かれており、それも上手かった。 作者の他の作品も読みたい。2021/01/03
カイエ
9
タイトルからの連想で「♪夢ならばどれほど…」と脳内BGMを鳴らしながら読み始めたが、内容も当たらずしも遠からず。喪失と、そこから派生する静かな狂気の物語であった。ミステリとして読むならイヤミスの部類。個人的には苦手なタイプの作品だけれども、それは多分同族嫌悪のようなもの、それだけ刺さるものがあったのだと思う。2022/01/25