出版社内容情報
動植物、文学、音楽から、軍服、罵り言葉、愛猫パードまで。「アメリカSFの女王」が繊細かつ奔放に綴った2010年代エッセイ。
内容説明
ル=グウィン生前最後のエッセイ集。ファンタジーの法則、ユートピアとディストピア、ホメロス論から、内なる子ども、植物の感受性、罵り言葉、愛猫パード、朝食の半熟卵まで。“ゲド戦記”など数多の傑作を遺した巨匠の繊細かつ大胆で機知に富んだ思考。2018年ヒューゴー賞(関連書籍部門)受賞。
目次
第1部 八十歳を過ぎること(余暇には何を;弱虫の逆襲 ほか)
第2部 文学の問題(ウッジュー・プリーズ・ふぁっきんぐ・ストップ?;読者からの質問 ほか)
第3部 世の中を理解しようとすること(兄弟たちの一団、姉妹たちの川;エクソシスト ほか)
第4部 報酬(巡る星々、取り囲む海;リハーサル ほか)
著者等紹介
ル=グウィン,アーシュラ・K.[ルグウィン,アーシュラK.] [Le Guin,Ursula K.]
1929年カリフォルニア州生まれ。オレゴン州ポートランドで長く暮らす。コロンビア大学などで、ルネサンス期のフランス文学・イタリア文学を専攻。1969年に長篇『闇の左手』でヒューゴー、ネビュラ両賞を受賞し、高い評価を得る。代表作に“ゲド戦記”シリーズなどがある。2018年没
谷垣暁美[タニガキアケミ]
1988年から翻訳に従事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
150
野生の動物に対する郷愁のような想い、動物園で動物を見たときの息苦しさ、通い合おうとする心、飼い猫に対する愛と呆れ。手に取るようにわかる。最期には、彼らが彼女の枕元にやってきて連れて行ったように思う。今は、木々が囁き、動物が寄り添う世界で、彼女が自分で作り上げた世界で、こんな笑みを浮かべてくつろいでいるのが見えて来る。ル=グウィンは、80を超えてからブログを始めた。きっかけは、サラマーゴが85-86歳にかけてしていたブログを読んで、双方向である必要がないことに喜び驚いたこと。書いたくれたことに感謝。2020/06/24
榊原 香織
115
R.I.P. 素晴らしい女性でしたね。 ”私たちの誕生は忘却と眠りにすぎない”byワーズワス 最後のエッセイ(ブログまとめたもの)。 激しさとユーモアが感じられます。 愛猫のエッセイが秀逸。2021/01/18
藤月はな(灯れ松明の火)
106
「80代でここまでの思考ができるなんて」というとアーシュラ・K・ル=グウィン女史に叱られるだろう。何故なら、彼女は老いを忌避し、年齢に逆らい、若々しい事を褒める事への違和感を感じていたからだ。特に菜食主義が持つ偽善性への指摘は『百姓貴族』の荒川弘さんのお母様の「環境を守る」という言葉への違和感を共に重ねてしまう。そして「ポジティヴ思考は良い事だ。しかし、現実を見ないポジティヴ思考は別だ」という言葉は人生をそこそこ、生きていない者でも身を正してしまう程、シンプルでいて含蓄がある言葉だ。忘れずにいたい。2020/09/18
どんぐり
100
老年期を生きる作家に、文章を書く限界はないのだろうか。ル=グウィンのエッセイは、それが杞憂に過ぎないことを示している。80歳の頃から始めたというブログに書かれた41篇は、「私の時間はすべて、使われている時間だ」というくらいに深い思索とユーモアあふれる文章が連なる。老いや文学、世の中のことなどいろいろテーマがあるなかで、いちばん面白かったのが飼い猫パードの日記にある「未完の教育」。狩猟本能で小動物をとらえてとどめを刺すことができないパードの戸惑いに笑った。いつかは著者の『ゲド戦記』に挑戦してみたい。2021/01/27
アキ
97
アーシュラ・K・ル=グウィンの最後のエッセイ集。2017年米国で出版。日本語訳は2020年出版。2018年1月12日に88歳で亡くなった。あとがきによると死の1週間前にも原稿を送っていたそうだ。亡くなる直前までなんと明晰でウイットに富む文章を書かれる人なのでしょう。ハーバード大学の同窓会へアンケートに余暇は何をしていますか?という質問への答えが、この題名である。第2部文学の問題で、「怒りの葡萄」とマーク・トウエインの小説を挙げているところが印象に残る。彼女のフィクション作品は未読。これから読むのが楽しみ。2021/01/04