内容説明
言語と人称がはてしなく分裂/増殖する現代ロシア文学の伝説的名作。異貌の巨匠ソコロフ、初の邦訳。
著者等紹介
東海晃久[トウカイアキヒサ]
1971年生まれ。ロシア国営ラジオ局「ロシアの声」翻訳員兼アナウンサーを経て、現在、神戸市外国語大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きゅー
12
正直言えば、ほとんど内容が頭に入らなかった。久しぶりに骨のあるというか、骨ばかりの小説に出会ってしまった。これから読もうとする方は、くれぐれも覚悟して読まれますよう。ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を読んでいる時のような、理解不可能性が大きな壁となって眼前に聳えている様子を思い描いてほしい。数行分の理解はできても、それが1頁、10頁というまとまりになると何が起きているのか見えない。後半になると多少は読み易くなるが、ただ単に気持ちの問題かもしれない。かなり根気のある、メタ文学好きの人にはおすすめしたい。2013/06/21
Yusuke Oga
7
現代ロシア文学においては「古典」となっているもののソローキンやペレーヴィンなどとは日本では遅れて紹介された亡命ロシア作家サーシャ・ソコロフのデビュー作。まず書き出しが凄い。「さて、でも何から始めたものかな、しかもどんな言葉で。」設定をバラすとこれは知的障害を抱える学校(特殊学級)へ通っている(とされる)一人の男児が口語で語る形式の小説である。しかし、男児は恐らく二重人格者であり統合失調症でもあるので当然の如くゴーゴリ『狂人日記』を想起させる。まるで意味不明な文章群が全編を覆い尽くすが、何故か心地よい傑作。2018/05/06
おおた
6
分裂する人称が時間と実体を超越する。あとがきに「現代ロシア文学の”古典”と呼ばれることを正当に要求する作品」とあり、こんな抽象的で五里霧中な作品が”古典”と呼ばれうるという現代ロシア文学の水準の高さに驚愕した。2010/12/31
sawa
4
沼野充義の書評につられて読んでみました。序盤こそ、その文体に古川日出男や町田康を薄っすら重ねて読みましたが…この怒濤は他と比べることができません(笑)解説を読んでも当惑気味に「ふーん」と呟くのが精一杯でしたが、エピソードの断片の煌きが忘れがたく、意味不明だと投げ出すこともできない憎い一冊。2011/01/29
Mark.jr
3
いわゆる実験文学には筋の要約はおろか、そもそもストーリーの理解を特に必要としてない作品があったりしますが、本書などもまさにそんな作品です。一人称が分裂し、時に改行も句読点もなくダラダラと続き、エピソードの切れ端ぐらいにきか解読できないこの文章は、Thomas Bernhardとか、那珂太郎とか、ユリシーズとか、色々思い浮かべますが、人間の頭の中を直接覗き込んだらこうなっているのではないかと思わせる底知れなさがあります。2022/12/23
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