内容説明
表題作ほか、死者たちのための灯火が、ひとつ、またひとつと消えていくのを目撃した少女の恐怖を描く「灯火を盗んだ男」、思春期の少女の性愛に対する深層心理を浮かび上がらせた「眼鏡の男」「天使の通り」など、夢想と現実のあいだを自在に行き来する「子ども」を主題とした傑作を収録。夫モラヴィアと並んで戦後イタリア屈指の作家の自選作品集。
著者等紹介
モランテ,エルサ[モランテ,エルサ][Morante,Elsa]
1912~1985。ローマ生まれ。幼いうちから童話や詩などの創作を始める。37年、評論家デベネデッティの紹介で雑誌に短編を寄稿。41年、作家アルベルト・モラヴィアと結婚。同年、短編集『秘密の遊び』を出版。48年、長編小説『嘘と魔法』でヴィアレッジョ賞、57年には『アルトゥーロの島』でストレーガ賞を受賞。20世紀イタリア最大の作家のひとりとされている
北代美和子[キタダイミワコ]
1953年、東京生まれ。上智大学大学院外国語学研究科言語学専攻修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
21
「祖母」は息子への執着と嫌悪しながら老いに適わない妻、祖母を慕うために死へと導かれる過程が見事。表題作の自分が身を引きたい理由に子供を出しに使ったと気づいた時に子供が「憐みを覚えなければよかった」と親に対して甘い夢を見ていた自分に憤り、幻滅する描写や親が子供を庇護すると同時に子供が離れられない存在であり、誇りに思う一方、子供に対して目的が見え透いた媚を売り、真意を問わない幻滅を伴う卑屈さの温度差が印象的でした。2012/08/21
きゅー
13
イタリアの女性作家による短編集。なんだかYAっぽい表紙だなと思って読み始めたけれど、ものすごいドロドロしている内容じゃないですか。息子を溺愛している母親の物語では、現実に起こり得るような人間の醜さや弱さがみっちり詰まっていた。タイトルにもなっている「アンダルシアの肩かけ」も結末の世知辛さが身に沁みる。小説なんだからそこまで幻滅を読者に味わわせなくてもいいんじゃないかと思えてくる。決して残酷な内容のものはないが、これらの物語が提示しているのは人生の暗い半面ばかり。なんともいたたまれない気持ちになってくる。2017/05/31
sabosashi
10
イタリアはキリスト教国のなかでもっとも信心深い国。 しかしそれでも、やはり都市部と地方では事情がかなり異なっているにちがいない。 もちろん地方のほうが旧弊であると思われるが、そんな具合に価値観のちがいがあるところでは、行為に対する価値判断もおなじく異なってくるはず(あれま、社会学のテキストみたいな書き方になってる)。 価値観が異なってくると、さまざまな次元においてアイデンティティの揺らめきに遭遇するに至る、他者のアイデンティティ、自己のアイデンティティ、といった具合に。 2017/05/06
ぼんくら
3
「灯火を盗んだ男」「眼鏡の男」「祖母」「天使の通り」「秘密の遊び」「同級生」「アンドゥッロとエスポージト」「いとこのヴェナンツィオ」「意気地のない男」「シチリア人の兵隊」「ドンナ・アマーリア」「アンダルシアの肩かけ 」20世紀を代表するイタリアの女性作家だそうです。まったく知りませんでしたが…。なんともわかりにくいお話ではありましたが、幻想的で印象的でした。「祖母」の母親の息子への異常な執着とか、「いとこのヴェナンツォ」の狂気とか、「アンダルシアの肩かけ」の母と息子の愛憎とか、不思議な世界に浸りました。2011/04/01
noko
3
すごく読みにくかった。日本語訳が、というわけではなく たぶん私の理解力が足りないせいだと思う。母の息子に対する異常な独占欲が怖かった。作者あとがきを読むと背景が少し理解できて良いかもしれない。2010/01/26