内容説明
母国セネガルでは共同体社会から疎外され、移り住んだフランスでも困難な生活を余儀なくされるサリ。しかし彼女は、複数の文化と言語を自らのアイデンティティとして、薄紫色のインクで言葉を紡ぎつづける。セネガル出身作家の自伝的小説。
著者等紹介
ディオム,ファトゥ[ディオム,ファトゥ][Diome,Fatou]
1968年、セネガルのサルーム諸島にあるニオディオル島に生まれる。非嫡出子だったため祖父母に育てられ、村社会から差別を受ける。13歳で島を出て、受け入れ家庭の家事をしたり市場で働いたりしながら中学・高校に通う。バカロレアをとって首都ダカールで大学に進学、在学中にフランス人と知り合い結婚する。1994年、夫の故郷ストラスブールに住み始めるが2年後に離婚。高学歴でも黒人の彼女はなかなか定職につくことができず、家政婦やベビーシッターをしながら、大学での研究と執筆をつづける。2001年、処女短編集“La Pr´ef´erence nationale”(『国民優先』)で作家デビュー。ストラスブール在住。ストラスブール大学で博士論文を執筆中
飛幡祐規[タカハタユウキ]
1956年、東京生まれ。1974年に渡仏、パリ第五大学で文化人類学、第三大学でタイ語、東南アジア文明を専攻。現在パリに在住し、新聞、雑誌に記事やエッセイを寄稿。インターネットマガジン「先見日記」の火曜担当としても活躍中
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感想・レビュー
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ぱせり
4
セネガルの離島とフランス、どちらにも漂着できず漂っていくサリの境遇のなんと不安なこと。といいつつ、この物語は、なんだかからりと明るい。それは、サリが自分の境遇やふるさとのありようを徒に嘆いていないこと(時にはユーモアに変えてしまう)、それから遠く離れた祖母や弟に寄せる温かく柔らかい思いに満ちているからだ。2022/02/28
takao
2
ふむ2024/08/05
tokis
0
セネガルの離島に生まれた少女はやがて、首都ダカールで出逢った夫に付き添いフランスで暮らすようになる。無意識の差別、犠牲を省みない拝金主義など、植民地時代の遺産が人々の心中にこそ最も巣食う現代にあって、葛藤の渦中を生きる一人の女性がしなやかに描き出されていく。力強いその説得力に比べれば、グローバリズム周縁の諸社会問題をめぐり巷間交わされるしゃちほこばった言説が、すべて虚しく思えてくる。人は目に見える社会問題よりずっと前で生きている。瑞々しいほどに。2010/07/28
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