内容説明
母親と幼い二人の娘はロンドンからマラケシュへ。フロイトの曾孫の半自伝的小説。英米で大ベストセラー。映画「グッバイ・モロッコ」原作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
301
原題("Hideous Kinky")とは似ても似つかないが、それでも邦題はおおよそ小説の内容を語ってはいる。ジークムント・フロイトの曽孫、ヒッピーと話題先行の本書だが、小説としてはいたって凡庸である。奔放な母親(マム)に従ってモロッコにやってきた5歳の娘が語る見聞録といった体裁をとっているが、そのことはマムの客体化という以上の効果を上げているとは言い難い。しかも5歳の娘という仮構と、語りとの間には乖離があり過ぎだろう。異世界(イギリスの反世界)としてのモロッコもまた表層的な感を否めない。2018/01/11
ケイ
115
出版されるなりベストセラーとなり、映画化もされたらしいが、私には全く良さがわからなかった。フロイトの曾孫であり、姉も有名なアーティストだった彼女の系譜が、話題を呼んだのかもしれない。幼い子供より、自分の生きたいように生きる母親。5歳の目から淡々と見つめているようでいて、実はそこに恨めしい気持ちが隠されているのだろうか。G1000なので読んだが、個人的には他の人に読めとはすすめられないなあ。2016/10/21
まふ
105
ヒッピー女性のモロッコ子連れ放浪記。英国から二人の娘を連れて憧れのモロッコへのとりとめのない旅を「マム」(母親)が実行する。母親は易経に凝っており、スーフィズムに関心がある。いわば無秩序を体現している。一方娘たちとりわけビーは秩序を求める傾向にあり「わたし」はいろいろと勉強しつつついてゆく。ヒッピーの行動原理なるものが存在するかはともかく、行き当たりばったりの毎日が興味深くもあり読むにつけてウンザリ感も湧いてくる。このような「母親ヒッピー」は歴史上間違いなく存在したのだろう。G497/1000。2024/04/29
NAO
78
ヒッピーの放浪生活を5才の少女の視線で描いている。そのため、変に思想的なところもなく、妙にさばさばとしている。原題の『Hideous Kinky』は、「みっともない 頭がいかれている」といった意味で、フケツ、ヘンタイ、と訳されている。これは鬱病になり何もしゃべらなくなってしまった母親のヒッピー仲間が唯一主人公姉妹に言った言葉で、姉妹は以後、何かあるたびに呪文のようにこの言葉を口にする。してみると、この姉妹にとって、ヒッピーの母親との放浪生活は、実はかなりストレスのかかるものだったのではないだろうか。2020/10/14
ぱせり
5
読んでいると時々少し苦しくなる。語られる一章一章が儚い夢のように思えて。彼らは、やがて英国に帰る。モロッコでの時間は、閉じたユートピアのようだ。ここでの暮らしはタイムポケットのように人生のどこにも繋がってはいない。それとも、どこかに繋がることがあるのだろうか。この閉じた空間が愛しい。独特の美しさがある。2020/11/10