内容説明
現実の背後にひそむもう一つの世界。そこに仕掛けられた罠にひとたび絡めとられたが最後、もはやなす術はなく、ただ終局的な破滅を「待っている」ほかはない…。日常の裏側の世界の陥穽にはまってしまったものの恐怖と苦悩を描く表題作のほか、寓意と幻想にみちた15の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
81
この表題。一篇のタイトルが全篇を物凄くよく表している。既読のものあったけれどこの表題の作用でさらに面白く読めた。待っているのは…待っているのは…待っているのは…いったい…?こう思いながら読むことで心拍数が密かに上がってくる。そして—待っていたのは…ひと言で言うならば不条理。その奥には人間の愚かさが見え隠れする。込められた痛烈な皮肉も。考えるとかなり怖いと思う。2021/04/16
ともっこ
18
皮肉とユーモアを混じえ、残酷で不条理なシュールレアリスム的世界を描く15の短編。 示唆に富む話、幻想的物語、不気味で恐ろしい物語、どれも夢中になって読んだ。 この一冊ですっかりブッツァーティの虜になってしまった。 ブッツァーティが「カフカの再来」とまで言われたのがよくわかる。2021/05/27
roughfractus02
11
世界は個人が自由意志で行動する空間と自由な未来に向かう時間に開かれている、という人間中心の考えが頓挫する物語は「不条理」と呼ばれる。が、作者は、世界が複雑であり、そんな世界観はあるきっかけで簡単に吹き飛ぶことを描くだけだ。男女の旅行者が突然地元民に襲われ、偶然アパートに水素爆弾が届き、カフカ「掟の門前」さながら開かない門の前に待ち続けて諦める物語は「AならBだ」という「条理」で世界を埋める人間の短絡な考えを剥き出しにする。そんな作品の中に作者は、人間は他者のために生きるという考えをそっと置く(「冒涜」)。2022/04/25
うえうえ
11
「夕闇の迫るころ」「友達」「夜の苦悩」がいい。訳も読みやすくてよかった。10ページ未満の短いものが多いが、イメージは豊か。こんなに短いのに満足感があるのには驚いた。ホラーっぽいしファンタジーっぽい。死のにおいが漂う物語たち。 2018/12/24
三柴ゆよし
11
光文社から出ている『神を見た犬』(オリジナルの傑作選集)を読んでブッツァ―ティに一目惚れした人は多いでしょうが、彼の邦訳をめぐる状況というのはいかんせん厄介なのですね。なので最初に本書の情報を簡単に説明すると、前掲書と重複する作品は「戦の歌」「クリスマスの物語」「この世の終わり」の三作品。これを多いと感じるか少ないと感じるかは人それぞれかと思いますが(というか実は本書も日本オリジナル編集の作品集なんですが)、少なくとも「ハズレ」の気分を味わうことはないでしょう。それだけ個々の作品のレベルが高いのです。2011/08/07
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