内容説明
エロスにはじまり死に終わる生の根源を幻想的光景のなかに鮮烈に描きだすマンディアルグ文学の極致。淫らで猥雑な行為も妖しい官能、高度のエロティシズムとして昇華する。孤高の作家マンディアルグのエロティシズム小説集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nina
12
フランス本国では1971年に刊行された全8篇の短篇集。やや観念的なエロティシズムをテーマにしつつ文体の上では実験的な作品が多い。幕開けの表題作はノルマンディー地方の海岸線に見られる満潮時のダイナミックな潮の動きに若々しい性の放出を重ね合わせた少し滑稽で微笑ましい艶噺。続く『アディーヴ』はヒロインがナンパした女の子がいざとなったら犬と入れ替わってしまったという幻想譚。レズビアンに犬が絡むモチーフはレベッカ・ブラウンの『犬たち』や松浦理英子の『犬身』に書き継がれていて、犬の象徴するものを考えると大変興味深い。2013/11/10
白黒豆黄昏ぞんび
5
アディーヴがエロティックでした。2013/04/14
渡邊利道
2
71年の短編集。表題作はその九年前に書かれた作品らしく、ラストの短編「海嘯」の会話の中にマンディアルグの短編としてその名が引用される(そして原著タイトルはこの短編のほう)。また「~だろう」や「だろうか」といった条件法や疑問系を駆使した夢幻的な文体による、これまでのバロック的細部を詳細に書き込みつつ古典的均整を保った作品よりもいっそうゆるやかでしかしなおかつ緊密な作品ばかりとなったいて、内容的にも残酷劇がどこなく軽さのある明るい肯定性と幸福感に充ちた本となっている。2017/09/07
勉誠出版営業部
1
アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの『短編集 満潮』を読了。冒頭に収録された表題作は、ストレートにエロティックな作品ながら、ほかの作品は中期以降のマンディアルグに顕著な抽象的な内容。2015/04/06
クマリカ
0
めっちゃくちゃ難しい 読んでて息苦しくなってきた 意味が多重に畳み掛けてきて何を言ってるのかさっぱりわからなくなる PKDのSFみたいに現実と幻覚や妄想が混ざって曖昧になって 過去と現在と未来が歪んでくる 最初の表題作『満潮』がわかりやすくて面白かったのでつい最後までよんでしまったけど 中高の夏休みの課題図書におすすめ2023/07/01